2021.12.24
「潮目が変わった今、自宅をどう売却するか?」
皆さんこんにちは。リノベーションが得意な中古住宅専門の不動産会社、株式会社しあわせな家 代表取締役の山田篤です。毎年恒例の年末コラムを書きました。
【過去の年末コラム】
2009年「不動産営業のあるべき姿」
2010年「私の役割」
2011年「職人の肌感覚」
2012年「結論は人間力と3.3倍」
2013年「NZの中古住宅売買から学ぶこと」
2014年「住まいの幸福度、世界一を目指す!」
2015年「中古住宅購入の注意点」
2016年「短く!わかりやすく!解説する。リフォームとリノベーションの違い。」
2017年「AI時代を見据えた、マイホーム購入成功のカギ」
2018年「カリフォルニアの中古住宅売買から学ぶこと」
2019年「しあわせな家ってどんな家?」
2020年「中学生に語る、私の仕事」
2021年「家を買おうと思ったら、一番に読んで欲しい住宅ローンの話」
今年のテーマは「潮目が変わった今、自宅をどう売却するか?」
過去3年のレインズ(不動産業者間ネットワーク)データから「現在の市況を読み解き」、自宅売却の「タイミング」と「方法」を皆さんにお伝えします。どうぞご期待ください。
今、中古住宅売買の市況はどうなっているのか?
公益社団法人東日本不動産流通機構が毎月公表している「サマリーレポート」(以下、レインズデータ)を見ると、以下の通りです。レインズデータの最新版は2022年10月度になりますので、そこから3年分の都区部および横浜市川崎市のデータを確認しました。
中古マンション
成約件数は、都区部は3か月連続で前年同月比を下回り、直近1年で前年同月比を上回ったのは6月と7月だけ。横浜市川崎市は10か月連続で前年同月比を下回り、直近1年で前年同月比を上回ったのは昨年12月だけ。
成約㎡単価は、都区部は30か月連続で前年同月比を上回った。横浜市川崎市は29か月連続で前年同月比を上回った。
在庫件数は、首都圏全体しかデータが公開されて無く、9ヵ月連続で前年同月比を上回った。
要約すると、中古マンションは、
成約件数は減ったまま
成約価格は上がったまま
在庫件数は増えたまま
となります。
過去3年のレインズデータをみると、潮目が変わったのは今年の2月。それまで26か月連続で在庫件数が前年同月比で減り続けていたのに、2月からは9ヵ月連続で増え続けている。2月までは物件が少ないから成約件数が少なかった可能性が高いが、2月以降は、物件はあるが価格が高いから成約件数が少ないという可能性が高い。
中古戸建
成約件数は、都区部は10か月連続で前年同月比を下回り、直近1年で前年同月比を上回ったのは昨年12月だけ。横浜市川崎市は3か月連続で前年同月比を下回り、直近1年で前年同月比を上回ったのは7月と昨年12月だけ。
成約価格は、都区部は10か月連続で前年同月比を上回ったが、横浜市川崎市は7か月ぶりに前年同月比を下回った。
在庫件数は、首都圏全体しかデータが公開されて無く、それまで27か月連続で前年同月比を下回っていたものの、9月10月と2ヵ月連続で前年同月比を上回った。
要約すると、中古戸建は、
成約件数は減ったまま
成約価格は上がった状態が続いていたが、横浜市川崎市では7か月ぶりに下がった
在庫件数は減少から増加に転じた
となります。
過去3年のレインズデータをみると、潮目が変わった可能性が高いのは今年の9月。それまで27か月連続で在庫件数が前年同月比で減り続けていたが、9月からは2ヵ月連続で増えた。9月までは物件が少ないから成約件数が少なかった可能性が高いが、9月からは物件はあるが価格が高いから成約件数が少ないという可能性が高い。その証左か、横浜市川崎市の成約価格が7か月ぶりに下がった。
これから、中古住宅売買の市況はどうなっていくのか?
上記のデータと私の肌感覚を掛け合わせて、これからの中古マンション・中古戸建(以下、中古住宅)の市況がどうなっていくかを予想します。
好立地の物件はまだ上がる
都心の好立地物件および、都心以外でも各駅にあるランドマーク的なマンションなど、多くの人が住みたいと思う好立地物件はまだ上がると予想します。
先日、横浜の好立地マンションの売却を担当させていただきました。不動産ポータルサイトに掲載した初日に5件の内覧依頼があり、結果3件の申し込みが入り、3件とも売主様の希望に対して満額回答、1週間で成約に至りました。決して安かったわけではなく、情報を得ることができる範囲で過去最高の坪単価、にもかかわらずこの結果でした。好立地物件の人気は非常に高く、まだまだ需要が旺盛であり、当面この流れは続くものと思われます。なお、海外マネーが入ってくるのは、都心の好立地物件でかつマンションに限られるでしょう。
それ以外の物件は下がる
上記のような物件は全体の中ではほんの一部で、多くの物件は下がると予想します。エリアによってはっきりと差がつき、立地が悪ければ悪いほど、下がるタイミングやスピードが速くなると思います。なお、住宅ローンの金利が上がることになった場合、この下落スピードは加速するものと思われます。金利が上がると返済額が増えて、借入れできる額が減るからです。ここは要注意です。
自宅を売却するタイミングは?
上記の通り、多くの物件の価格が下がると予想しているわけなので、自宅を売却するタイミングは早ければ早いほど良いということになります。もちろん、ご家族のタイミングを無視してまでそうするのはどうかと思いますが、そんな中でやってはいけないのは、売りに出してすぐに長期休暇がくるというタイミングです。
不動産業界も昔と変わり、GW・お盆・年末年始は長期休暇を取るようになりました。不動産は売りに出した最初の1か月がとても重要で、その大事な1か月の間に長期休暇が入ってしまうと内覧機会の損出となり、非常にもったいないです。また、後述しますが、売りに出してから成約までの期間が短ければ短いほど、価格交渉が少なくなり、売出価格と成約価格の乖離が小さくなります。つまり、新鮮であればあるほどイイのです。無駄な時間が売り出し直後に来ないように、長期休暇の直前は避けて、直後から売りに出すのが良いでしょう。
自宅を売却する方法は?
これまで数百件の中古住宅売却に携わってきたノウハウを包み隠さず公開しますので、エンドユーザーの皆さまはもちろん、共に働く同業者の皆さまにも読んでいただきたいと思っています。
まず、この数年は物件数が少なく、成約価格が右肩上がりだったので、はっきり言うと誰が担当しても自然に成約に至り、それなりに何とかなっていたと思います。ところが上述の通り、潮目が変わった今「なぜ成約に至らないのか・・・」と苦戦をしている人も多いのではないでしょうか。そうです、ここからが不動産会社の腕の見せ所、「方法」で勝負をする時代に突入しているのです。
査定額が高い会社ではなく、売却方法が明確な会社を選ぶ。
最初に同業者に言わせていただくと、
「もう査定額で競うのは止めにしよう。各社売却方法で競おう!」
これまで何回も書いてきていますが、家の査定は車の査定とは違います。車の査定は買取金額なので、一番高い会社に任せると一番多くお金を手にすることができます。ところが家の査定は「市場に出すとこの位の金額で売れるでしょう」という価格なので、不動産会社がその数字に責任を負うことはなく、いくらでも操作ができてしまいます。
ホームズなどの一括査定サイトで6社に査定をしてもらうと、だいたい1社か2社、あまり聞いたことが無い会社の査定額が飛び抜けて高いです。これは、「査定が高いと高く売ってくれる」と思ってしまい(そう思ってしまうのは仕方ありません)、依頼をしてもらえる可能性が高くなるからです。その業者はまずはその金額で専任媒介をもらい、1か月経っても当然売れないわけで、そこから価格を下げていき成約にもっていくという手法です。もうこういうお客様に失礼な手法は終わりにして、「方法」がフォーカスされる時代にしていきたいです。そういう想いも、このコラムを書く動機になりました。
そもそも売却を依頼された不動産会社の役割は何か?
売主様のほとんどは自宅に愛着を持っているので、この家を心から気に入ってくれる人に売って欲しい。そして、できるだけ高く・早く売って欲しいと願っています。
いっぽう、不動産会社の多くは、とにかくクレームが無いように安全で手離れの良い取引にしたい。そして、できれば両手取引にしたいと願っています。(両手取引については様々なところに書かれているので詳述しませんが、私はこれを否定しません。結果的に両手取引になることは特にここ最近は多く、両手取引をしたいが為に、売主様に損出を与えることをしなければ問題ないと考えています。)
では、上記の売主様の願いを叶えるために、不動産会社の具体的な役割は何でしょうか?
1.宅地建物取引士の役割=安心安全な取引にすること
2.広告代理店の役割=物件の特長を販売図面や不動産ポータルサイトで表現すること
3.モデルルーム案内人の役割=物件についてきちんと説明をすること
この3つの役割を成就することが、私が考える不動産会社の役割=弊社の売却方法であり、これをしっかりと行うことで売主様の願いを叶えることができると考えています。それぞれ解説をしていきます。
1.宅地建物取引士の役割=安心安全な取引にすること
これは2つにわかれまして、ひとつは宅建業法や業界の慣習に沿った安心安全な取引にすることです。ふたつ目は、いわゆるクレーマーのような人が買主様にならないように、言い方は悪いですが、買主様を見極めることです。昔は不動産会社や担当者によってここに違いはあったと思いますが、最近はほとんど差が無いように感じます。ここで差別化することは難しく、もはやこれは当たり前のこと、できて当然になっていると思います。
2.広告代理店の役割=物件の特長を販売図面や不動産ポータルサイトで表現すること
ここの違いで反響の数が変わります。ここが不動産会社の大事な役割と考えている業者は、特に大手に少ないと感じます。大手の場合、社内ルールで表現できることに制限をかけている会社もあります。逆に中小は反響の数が死活問題なので、ここを必死に取り組んでいる会社が多いです。ただ「即日内覧可」のような体育会系のノリや「〇〇プレゼント」のようなものが見られ、本質である物件の特長をとらえたものは少ないです。これは「建物」にいついての知識が乏しいことが原因だと考えています。
お部屋の写真撮影もここに含まれます。少しグリーンを置くなど、お部屋をどう見せるか、どこから見せると美しいかも重要です。また、メリハリを付けた整理整頓の仕方を売主様に教えるのも大切な役割です。また、販売図面は多くを書き過ぎてゴチャゴチャにならないように、言いたいことを3つに絞るなど、わかりやすく特長を表現するように努めます。
例を挙げます。大手で半年以上売れなかったマンションを、弊社が担当したら約1か月で成約になった事例です。メゾネットのマンションだったのですが、1階と地下の行き来がバルコニーと外廊下からしかできず、お部屋の中からアクセスできない特殊な間取りでした。普通に考えるとデメリットになるこの間取りを逆手に取り、こんなキャッチコピーを付けました。
「離れ。ちょうどよい距離感。」
地下室を「離れ」と、アクセスの悪さを「ちょうどよい距離間」と表現し、コロナ時代にマッチしたニーズに変換しました。いかがでしょうか?こうすることで、劇的に内覧数が増えて成約に至り、売主様から「会社が変わるとこんなに変わるのか・・・」と喜びと驚きの声をいただきました。
3.モデルルーム案内人の役割=物件についてきちんと説明をすること
ここが不動産会社の一番の腕の見せ所です。絶対に必要なのは建物の知識です。特に物件価格が高額になればなるほど、説明するポイントは増えていきますので、ここをきちんとできるかどうかで結果が変わります。これができている担当者は本当に少ないのが現状です。
例を挙げると、
注文住宅の場合、積水ハウスやスウェーデンハウスのような高額な家を選んだ売主様には理由があります。一般的な会社で建てた場合を基準に、積水ハウスやスウェーデンハウスの特長を説明しながら案内をします。
「積水ハウスの軽量鉄骨住宅は建築基準法の1.5倍の耐震性が標準仕様で、さらに制振装置がついているので地震の揺れを軽減してくれます。また、木造に比べて柱の本数が少なくこれを実現しているので将来の間取り変更もしやすい構造です。2階の床にALCコンクリートが100㎜入っているので音が響きにくく、サッシも樹脂サッシで断熱性に優れ、快適に暮らすことができると思います。特筆すべきは、建物の保証が買主様に承継されます。一般的には所有者が変わると保証はそこで終わるのが普通ですが、大手ハウスメーカーの場合、人に保証を付けているのではなく、建物に保証を付けているという考え方なのです。一般的な住宅は耐用年数40年~50年位なのに対して積水ハウスは70年以上と言われています。総合的にみて建物の価値が高く、この物件価格に反映されています。」
マンションの場合、なぜこのマンションを選んだのか、なぜこの部屋位置を選んだのかを説明しながら、一般的なマンションを基準に、構造や設備の特長を説明します。
「購入時に3件の新築マンションを比較したそうですが、駅からの道のりが一番安全だと感じてこのマンションに決めたそうです。また、構造がアウトフレーム逆梁工法でハイサッシになっており、お部屋が明るくなるのもポイントです。ラーメン構造と言って柱と梁で耐震性を担保しているので、ここにあるパイプスペース周りを除いた、ほぼ全ての室内の壁を取り払うことができ間取りに可変性があります。部屋位置は申し込みのタイミングが遅く、どれでも選べたわけではなかったそうですが、あえてエレベーターから離れた位置にすることで、部屋の前を歩く人が少なくなることを優先したそうです。設備は特にキッチンを重視したそうで、ここはトーヨーキッチンの3Dシンクが入っており、奥様がそれを気に入ったことが購入の決め手になったそうです。トーヨーキッチンをご存じですか?日本のキッチンメーカーでは最高峰に位置付けられている高級キッチンメーカーです。分譲価格は他の2件よりも高めだったそうですが、迷わずこちらを選んだそうです。」
一般的な建物はどうなっているのかを基準に、この建物の特長を説明しています。また、購入希望者からの質問にも的確に答えることが必須です。これには建物の知識が絶対に必要になります。宅地建物取引士資格の勉強ではこの辺は全く触れられませんし、会社の研修でもこういう勉強をしているところは少ないと思います。
乱暴に言ってしまうと「物件の長所を見抜けるかどうか」。これができるかどうかで、売主様が願う「高く・早く」を実現できるかどうかが確実に変わってきます。また、心から気に入ってくれるかどうかも、この説明があるのと無いのでは、全く違ってくるのではないでしょうか。
これら3つの役割を成就することが、私が考える不動産会社の役割=弊社の売却方法です。お陰様でほとんどのご依頼に対して、売主様にご満足いただける結果が出ています。
売主様に知って頂きたいこと6つ
①どの会社に頼むか < 誰に頼むか
「大手に頼んでおけば安心」と思っている方が多いと思います。現実にエリアによって大手寡占率が80%を超えているところもあると思います。ただ、インターネット前の世の中ではチラシなどを使った大手の資本力には優位性があったと思いますが、インターネット時代になり、大手はチラシを止め、集客力に大きな差は無くなりました。大手不動産会社の自社ホームページの閲覧数と、スーモに物件を掲載した閲覧数では、圧倒的にスーモの勝ちになります。
それより大事なのは担当者です。大手であろうと、中小であろうと、担当者の力量が最も大事です。上記3つの役割の2と3がきちんとできる担当者を選ぶことが、どの会社に頼むのかよりも重要になっています。担当者に建物の知識があるかどうかを見極める方法として、以下のように質問をしてみるとイイと思います。
Q この家は二重床になっていることとペアガラスになっていることがメリットだと、買う時に言われました。二重床とペアガラスは具体的にどういう効果があるのでしょうか?
A 二重床だと防音効果が高いです。ペアガラスも同じで防音効果が高いです。
勉強をしていなければこの答えも出てきませんが、この答えは不正解です。二重床も直床も防音効果に差は無く、二重床の方が間取り変更に対応しやすい(可変性が高い)が正解です。また、ペアガラスも防音効果はなく、断熱性が上がるのが正解です。防音効果が高いのは二重サッシになります。
Q 我が家は〇〇ハウスで建てました。〇〇ハウスの特長をご存じですか?
この質問の答えを聞いて、それなりに答えられていれば任せてイイですが、全く何も答えられないようなら止めておいた方がイイです。当たり前ですね。「どこの会社に頼むか < 誰に頼むか」が、最初に知って頂きたいことです。
②良い失敗にチャレンジしてくれる担当者を選ぶ
不動産会社がいただける報酬は成功報酬です。売れなければ1円もいただけません。なので、確実に売れる価格で売りに出したいのが本音です。しかし、売主様と担当者に信頼関係が構築されていて、売れるまできちんと任せてもらえるという安心感があれば、担当者はチャレンジングな価格で市場に出してくれるかもしれません。「査定額は〇〇円なので、この価格であれば3か月以内に売れると思います。しかし、〇〇円でも可能性がゼロではないと思うので1か月ほどチャレンジをしたいと思いますがどうでしょうか?」
こう言ってくれる担当者は二重丸です。もちろんチャレンジなので失敗することはありますが、失敗にも良い失敗と悪い失敗があります。良い失敗はチャレンジをした結果、売れないこと。1か月位と期間を決めて、ギリギリの価格でチャレンジをしてくれる担当者を選ぶことをお勧めします。
③戸建はリセールに弱いは本当か
不動産業界では、戸建はマンションに比べてリセールに弱いと言われています。これは本当でしょうか?弱い原因は戸建にあるのではなく、戸建の知識が無い不動産会社にあるのではないでしょうか?不動産会社の役割3ができる担当者が少ないことが理由ではないでしょうか?
マンションに比べて戸建は千差万別です。様々な工法があり、各社特長がバラバラです。しかし前述の通り、価格が高い建物には理由があります。それを理解し説明しなければ安くなってしまうのは当然のこと、戸建ほど担当者の役割が大きいということです。ここは非常に重要なので、売主様にもご協力をいただき、できる限りの資料を揃えて担当者と一緒に確認をし、何をどう説明するかを共有するとよいでしょう。
④成約までの期間と価格交渉
弊社では3か月以内の成約を目標に動きます。売主様のご意向次第ですが、最初の1か月はチャレンジをして、難しければ価格を下げてそこから2か月内の成約を目指します。価格を下げるのは1回を基本としています。理由は、小刻みに下げると足元を見られて価格交渉が深くなることが多いからです。
ここでひとつ、東京カンテイさんがリリースしている情報をお見せします。売り出しから成約までの期間に応じた、売出価格と成約価格の乖離率を示しています。
ザックリ言うと、1か月以内に売れた場合は値引きが2.4%くらい。3か月なら5.4%、6ヵ月なら7.4%、12ヵ月なら9.4%ということです。よく見ると売出価格が下がっていくので、当初の売出価格と比較すると、もっと大きな差が出ているものと思われます。
これは知識としてぜひ知っておいていただきたいです。長く時間をかけて高く買ってくれる運命の買主様に出会いたいと考えている売主様がいらっしゃいますが、時間をかければかけるほど(9ヵ月を過ぎればあまり変わらない)、高く売れる可能性は低くなります。私の肌感覚では、3か月までは大きな影響はありませんが、それを過ぎてくると業者の間で売れ残り感が出てきます。そうなる前に決着をつけることをお勧めしています。
⑤専任か?一般か?
専任媒介は1社に任せること。一般媒介は数社に任せること。ザックリ言うとこうなりますが、誤解を恐れずに言ってしまうと、一般媒介を本気で取り組む不動産会社があるなんて信じられません。不動産会社のノルマの一番上にくるのは成約ですが、次にくるのが媒介の数です。そのノルマをクリアするために、渋々一般媒介を受けているというのが本音ではないでしょうか。手間と時間を掛けずに成約になったらラッキー位の気持ちで取り組むのが一般媒介だと思っています。
これが売主様にとって良いはずがありません。本気で時間と労力をかけて不動産会社の役割2と3を行うと、それが徒労に終わるなんて絶対にイヤですし、そんなことが続いたらスタッフのメンタルが維持できないと思っています。そのため、弊社は専任のみ、一般媒介はお断りをしています。これが売主様にとっても最適解だと考えています。
⑥空室は要注意
これは案外知られていない事実ですが、空室にして販売活動をする場合の注意点です。これを理解するには、まず販売活動の仕組みを知ることが必要です。
売却依頼を受けた不動産会社は大きく分けると2つの媒体に物件情報をアップします。ひとつ目は、自社ホームページやスーモなどの不動産ポータルサイト、ふたつ目は、レインズ(不動産業者間ネットワーク)です。前者に掲載して反響があった場合は、売主様から依頼を受けた不動産会社担当者が内覧の立ち合いをします。これは問題ありません。ところが、後者に掲載して反響があった場合は、他の不動産会社のお客様の内覧なので、鍵をその業者に貸し出し、売主様から依頼を受けた不動産会社担当者は内覧立ち合いしないのが業界の常識です。居住中の場合は必ず立ち合うのに、空室だと立ち会わない。これはおかしいと思いませんか?これが問題です。
よく考えてみてください。後者の場合、不動産会社の役割3つはどうなるでしょうか?
他の不動産会社担当者は、ほとんどのケースでこの物件を見るのは初めてになります。初めて見る人が役割3の物件の説明をきちんとできるでしょうか?この業界に入ってもうすぐ30年、注文住宅建築、新築マンション購入、中古を買ってリノベーションとひと通りを経験してきている私でも、きちんと準備をして内覧対応をした場合を100とすると、初めての内覧対応では50も説明できないことでしょう。
そこで弊社では、空室でも内覧立ち合いをしています。売却の依頼を受けた不動産会社の役割1の買主様を見極める、および役割3を成就するため、全力で取り組みます。私が知る限り、空室で内覧対応をしている業者は全く無く(残置物があり売主様から対応を頼まれているケースを除く)、これをやっているのは弊社くらいかと思います。それでも、自分の信念を曲げずに今後も続けていきます。
「御社は、空室の場合に他社から内覧依頼があったら、立ち合いをしますか?」と聞いてみてください。どういうリアクションをするか、立ち合いをしない理由が売主様目線かどうか、チェックをしてみてください。その会社の熱量を感じられるでしょう。
ここまで長文にお付き合いいただき有難うございます。
繰り返すと、伝えたかったのは
〇多くの中古住宅は下落フェーズに入った
〇これからは査定額ではなく「売却方法」で競う時代
〇不動産会社の役割は3つ。宅地建物取引士・広告代理店・モデルルームの案内人
〇担当者に必要なのは「建物の知識」
〇売主様に知って頂きたいこと6つ
です。このコラムがこれから中古住宅を売却する方のお役に立てるものと信じております。
それでは最後にいつものフレーズを。
未来が楽しみで仕方ありません。
頑張ります!
令和4年12月吉日 代表取締役 山田 篤
【筆者紹介】
山田篤 1971.5.24生 横浜市緑区出身 1995年積水ハウス㈱入社 新人賞をはじめ数々の優秀賞を受賞
これからは新築ではなく中古の時代になると確信し2008年㈱しあわせな家創業
小4から大学まで野球部 妻・娘2人の4人家族 不動産・特に建物が大好きです!
私の仕事がよくわかるコラム「中学生に語る、私の仕事」もぜひご覧ください