2022.12.24

「家を買おうと思ったら、一番に読んで欲しい住宅ローンの話」

皆さんこんにちは。リノベーションが得意な中古住宅専門の不動産会社、株式会社しあわせな家 代表取締役の山田篤です。
毎年恒例の年末コラムを書きました。

【過去の年末コラム】
2009年「不動産営業のあるべき姿
2010年「私の役割
2011年「職人の肌感覚
2012年「結論は人間力と3.3倍
2013年「NZの中古住宅売買から学ぶこと
2014年「住まいの幸福度、世界一を目指す!
2015年「中古住宅購入の注意点
2016年「短く!わかりやすく!解説する。リフォームとリノベーションの違い。
2017年「AI時代を見据えた、マイホーム購入成功のカギ
2018年「カリフォルニアの中古住宅売買から学ぶこと
2019年「しあわせな家ってどんな家?」
2020年「中学生に語る、私の仕事

今年のテーマは「家を買おうと思ったら、一番に読んで欲しい住宅ローンの話」

たった今、家を買おう!と思った人のほとんどは「suumo」や「at home」を検索して、気になる物件をみつけて内覧をするという動きをします。そこで、その物件を売りたくて売りたくて仕方がない担当者と出会い、その物件が買えるかどうか?住宅ローンの審査をしてもらいます。

一見、普通の動きにみえますが、この住宅ローンの審査はその物件を買うために必要なお金を借りられるかどうか?=「借入可能額」の審査をしています。この審査が厳しめであれば問題ないのですが、そんなことはなく、ざっくり言うと年収(手取りではなく額面)の40%まで住宅ローンの支払いに充ててもOKとなっています。つまり借入が適正か否かの審査をしているわけではないのです。

考えてみてください。年収500万円の40%は200万円。月にすると16.6万円の返済になります。年収500万円の手取りはざっくり400万円。月にすると33.3万円のお給料の内、16.6万円の返済額ということはちょうど半分です・・・大げさにいうと、趣味や遊びにお金を使うのは最小限にして、住宅ローンの返済のために生きていくという感じになります。これはさすがにほとんどの人がNOですね。。。

じゃあどうすればイイのか?これは弊社が創業来言い続けていることなんですが、家を買おうと思ったら、物件を内覧に行く前=候補物件が無い状態で不動産会社に相談に行ってください。この相談のことを弊社では「初回相談」と呼んでいますが、そこでこう言ってください。「私の借入適正額はいくら位ですか?」

「借入可能額」ではなく「借入適正額」、いくら借りられるか?ではなく、いくら位を借りるのが適正か?を計算してもらうのです。

これは簡単な計算式で出てくる数字ではなく、年齢、家族構成、今後のライフプランなどなど、様々な要素を検討して導かれる数字になります。しかし、初回相談=初めて会ってすぐにそこまで深堀りはできないので、弊社では必要最小限の情報をヒアリングし、幅を持たせた「借入適正額」の提案をしています。私がこれまで20年以上、延べ数百人の住宅ローンに関わってきて、この位であれば理想的だけど、ここまでだったら普通の暮らしができるでろうと、経験値から導いた数字になります。

あくまで初回相談時の「借入適正額」であって、最終的には物件を探しながら最適解をみつけていくわけですが、ここで本邦初公開!弊社が行っている初回相談時の「借入適正額」の計算を、私が設定した3つのご家族に対して行ってみます。自己資金をいくら使ったらイイかという提案を含めて「A様はいくら位で物件を探して行きましょう」という、いつもの初回相談の内容をそのまま公開してしまいます。

3つのご家族
【A様 堅実な公務員35歳4人家族の家探し】
【B様 46歳パワーカップル港区マンション探し】
【C様 結婚したばかり世帯年収900万円の家探し】

それではスタートします!

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【A様 堅実な公務員35歳4人家族の家探し】

御主人35歳 市役所勤務 年収550万円 貯金700万円
奥様 専業主婦 貯金100万円 子どもが2人とも小学校に上がったらパートをしたい
長女 5歳 幼稚園 来年から小学校
長男 2歳 来年から幼稚園
現住居:賃貸アパート45㎡ 家賃10万円
親:御主人様の両親が市内に持ち家一戸建。贈与可能性あり。
奥様の両親は地方在住で兄が一緒に住んでいる。贈与は期待できない。
新しい住まいへの要望:一戸建で子育て環境重視。教育費も考えた堅実なマイホーム取得をしたい。

借入可能額:4140万円
(金利4%、80歳までの年数(max35年)、年収の40%で計算)

借入適正額:2990万円~3740万円
(左の数字:固定金利1.5%、定年までの年数、年収の20%で計算)
(右の数字:固定金利1.5%、80歳(35年max)までの年数、年収の25%で計算)

借入適正額チェック
①現在または未来の配偶者の収入を計算に入れていない方=〇
②お子様にお金がかからない方=×
右肩上がりに収入が増えていく方=◎
④将来まとまったお金を受け継ぐ可能性のある方=△
⑤購入物件を売却する予定のある方で、自己資金が多く、売却金額でローン完済の可能性が高い方=×

山田より
「ご勤務先が固く、右肩上がりに収入が増えていく金融機関が最もお金を貸したい人になります。」
「とはいえ堅実な買い物をということなので、できるだけ住宅ローンは少なくしたいところですが、ストレートに申し上げると、借入適正額の左の数字では、市内の環境の良い立地で一戸建は難しいです。」
「なので、最終的に借入適正額の右の数字に近づくと思いますが、まずは中央値くらいで物件を探しはじめましょう。」⇒借入3400万円くらい
「贈与の可能性ありとのことなので、一般的な中古住宅の場合はMAX610万円になります。ご両親様にご確認をお願いします。」
「貯金700万円の内、生活費約6ヶ月分の300万円と、家具家電や引越し代などの100万円を足した400万円を手元に残し、残りの300万円を今回の住宅購入に使いましょう。」

定年時残債(繰り上げ返済しなかった場合)
65歳の残債:約710万円 逆に言うと、これが定年65歳までの29年間での繰り上げ返済目標額です。充分可能な額だと思います。

結論
住宅ローン3400万円+自己資金300万円+贈与(MAX610万円)=MAX4310万円
諸費用が約300万円と考えると「3400万円+贈与の額」が物件+リノベの総額
3400万円からMAX約4000万円の住まいを探していきましょう。

渋谷区千駄ヶ谷T邸

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【B様 46歳パワーカップル港区マンション探し】
御主人 46歳 上場企業課長勤続23年 年収920万円  預金800万円
奥様 46歳 上場企業事務勤続24年 年収600万円  預金300万円
子どもは考えていない。お金はドンドン使うタイプ
現住居:港区賃貸マンション 40㎡ 家賃25万円
親:双方贈与の可能性大
新しい住まいへの要望:絶対に港区アドレスに住みたい。70㎡で1億2千万円くらいであることはわかっている。何とかしてそれを購入したい。

借入可能額:11440万円
(金利4%、80歳までの年数(max35年)、年収の40%で計算)

借入適正額:4790万円~9880万円
(左の数字:固定金利1.5%、定年までの年数、年収の20%で計算)
(右の数字:固定金利1.5%、80歳(35年max)までの年数、年収の25%で計算)

借入適正額チェック
①現在または未来の配偶者の収入を計算に入れていない方=×
②お子様にお金がかからない方=〇
③右肩上がりに収入が増えていく方=△
将来まとまったお金を受け継ぐ可能性のある方=◎(上記双方贈与の可能性大より)
⑤購入物件を売却する予定のある方で、自己資金が多く、売却金額でローン完済の可能性が高い方=△

山田より
「初めてお会いするのにこんな話をするとデリカシーの無い奴だと思われるでしょうが、ここがポイントなので敢えて話をすると、④について可能性は高いですか?もし高いなら、港区は最も資産価値が下がりにくいエリアと言えますし、想いもお強いようなので、思い切ってMAXの借入額にチャレンジしてもイイのではないでしょうか」
「MAXにチャレンジするなら、週2回飲みに行っていたのを1回にするとか、お互い何かを我慢しなければいけない感じになると思いますが大丈夫ですか?」
「住宅ローンをたくさん持つことが仕事のモチベーションにつながるタイプですか?重荷に感じるなら止めた方がイイですが、前向きに捉えられるならイイと思います。」
「11000万円を固定金利1.5%、33年ローンを組むと352,346円/月になります。払えますか?変動なら300,000円/月ほどになりますが、MAXにチャレンジするなら固定の方がイイと思います。」⇒借入約11000万円
「預金1100万円の内、生活費約6ヶ月分の500万円と、家具家電や引越し代など100万円を足した600万円を手元に残し、残りの500万円を今回の住宅購入に使いましょう。」

定年時残債(繰り上げ返済しなかった場合)
65歳の残債:約6340万円 これだけの額を65歳までに繰り上げ返済するのは相当厳しいので、相続でまとまったお金を得られなかった場合は定年のタイミングで売却することになる可能性が高いです。それでも、今とマンション価格が変わらなかった場合は手元に5000万円ほど残る計算になり、次のステージの選択肢は充分にあります。

結論
住宅ローン11000万円+自己資金500万円+贈与(MAX1220万円)=MAX12720万円
諸費用が約500万円と考えると「11000万円+贈与の額」が物件+リノベの総額
相場通り、MAX約12,000万円の住まいを探していきましょう。なお、住宅取得の贈与税の特例の額が来年から変わりますので、そのニュースが出てから動き出すのがイイでしょう。

N邸 天井

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【C様 結婚したばかり世帯年収900万円の家探し】
御主人 38歳 ITベンチャー勤続5年 年収500万円  貯金500万円
奥様 35歳 小さな会社事務勤続3年 年収400万円 貯金500万円 生涯働くつもり
結婚して間もない。子どもはすぐにでも欲しい。
現住居:横浜市内賃貸マンション 50㎡ 家賃12万円
親:双方贈与の可能性なし
新しい住まいへの要望:子どもを授かった時に無理のない資金計画を立てたい。 広さは70㎡以上欲しく、予算に合わせた立地にしたいが、駅近は譲れない。

借入可能額:6770万円(ペアの場合)3760万円(御主人のみの場合)
(金利4%、80歳までの年数(max35年)、年収の40%で計算)

借入適正額
①奥様の収入100%算入:4890万円~6120万円
②奥様の収入50%算入:3810万円~4760万円
③奥様の収入0%算入:2720万円~3400万円
(左の数字:固定金利1.5%、定年までの年数、年収の20%で計算)
(右の数字:固定金利1.5%、80歳(35年max)までの年数、年収の25%で計算)

借入適正額チェック
現在または未来の配偶者の収入を計算に入れていない方=ここがポイント
②お子様にお金がかからない方=×
③右肩上がりに収入が増えていく方=△
④将来まとまったお金を受け継ぐ可能性のある方=×
⑤購入物件を売却する予定のある方で、自己資金が多く、売却金額でローン完済の可能性が高い方=×

山田より
「最大のポイントは奥様の収入を計算に入れるかどうかです。理想は「入れない」になりますが、そうすると立地がかなり絞られてきて、住みたい家に出会えないかもしれません。なので、まずはそこから物件探しをスタートして、奥様の収入50%算入あたりまでで物件がみつかることを目標に進めて行きましょう。」⇒借入3400万円~4500万円くらい
「貯金1000万円の内、生活費約6ヶ月分の300万円と、家具家電や引越し代などの100万円、および奥様の産休育休期間の返済原資100万円を足した500万円を手元に残し、残りの500万円を今回の住宅購入に使いましょう。」

定年時残債(繰り上げ返済しなかった場合)
65歳の残債:奥様の収入0%算入だと約1050万円
奥様の収入50%算入だと約1390万円
逆に言うと、これが65歳までの26年間での繰り上げ返済目標額になりますが、充分可能な額だと思います。

結論
スタートは、住宅ローン3400万円+自己資金500万円=3900万円
諸費用が約300万円と考えると3600万円が物件+リノベの総額
もし難しいなら、住宅ローン4500万円+自己資金500万円=5000万円
諸費用が約300万円と考えると4700万円が物件+リノベの総額

これでいきましょう。

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いかがでしょうか?リアルな打合せを感じていただけましたか?
家を買おうと思ったら一番に読んで欲しい理由をわかっていただけたのではないでしょうか。

繰り返しますが、「借入可能額」ではなく「借入適正額」、いくら借りられるか?ではなく、いくら位を借りるのが適正か?です。ぜひ、内覧に行く前に不動産会社に相談に行ってくださいね。しあわせな家の初回相談申込みはこちらから。お気軽にどうぞ。

2021年もコロナ一色、私は人生初の体調不良を経験し、悪い意味であっという間の1年でした。しかし、創業して14年目、ただただ突っ走ってきましたが、良い意味で立ち止まって考える時間にもなりました。これも最初から決められていた私の人生の一部なのではないかと思うほど、今は、未来に向けて心が整っています。ご迷惑をお掛けした方も多く居ますので、この場を借りてお詫び申し上げます。申し訳ございませんでした、そして、ありがとうございました。

それでは最後にいつものフレーズを。
未来が楽しみで仕方ありません。
頑張ります!

令和3年12月吉日 代表取締役 山田 篤

【筆者紹介】
山田篤 1971.5.24生 横浜市緑区出身 1995年積水ハウス㈱入社 新人賞をはじめ数々の優秀賞を受賞

これからは新築ではなく中古の時代になると確信し2008年㈱しあわせな家創業

小4から大学まで野球部 妻・娘2人の4人家族 不動産・特に建物が大好きです!

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