2021.02.14

住まい選びの注意点⑤「地盤」

横浜マンションの「地盤データ改ざん問題」についてご記憶の方も多いと思いますが、データを改ざんしたことと建物が傾いたこととの因果関係は、実はまだよくわかっていません。しかし時間をかけて原因究明するより、早期に建て替えしてしまったほうが良いだろうと、売主である三井不動産は考えたのでしょう。 一般論として建物に傾きがあるとき、その原因の多くは建物本体に起因する事が多いものの、実は「地盤」にあったという事例がしばしば散見されます。今回はこれらのうち「傾斜地の注意点」についてお知らせしましょう。 例えば「盛り土(もりつち)」の分譲地は要注意。

【図1】赤線部分を「盛り土」した場合、その分地盤は弱くなる

【図1】のように、傾斜地に土を盛って造成した場合、地質的にその部分は当然弱いものです。 大震災などの大きな地震の際には、こうした地盤が崩壊する事例報告が多く見られます。もちろん、建物本体がしっかりと支持層に到達するような地盤改良工事を行っていれば問題ありませんが、地盤調査や地盤改良が法的に事実上義務化となったのは2000年以降。つまりそれ以前に建てられたものは、今はあたりまえに行われている地盤改良が施されていないものもたくさんあるのです。

形状は同じように見えても【図2】にあるような「切り土(きりつち)」の場合、元々あった土地を削り取って造成されています。

【図2】赤線まで地盤を切り取って造成する「切り土」

このやり方なら、元の地盤さえしっかりしていれば基本的に問題はありません。こうした造成地で地震後に、地盤を原因とした問題があったとの報告は見られません。傾斜地にある分譲地がどのように造成されたかについては、市区町村役場の建築審査・指導を担当する部署を尋ねると、当時の資料が残っていることがあります。また、不動産仲介業者を通じて所有者にヒアリング、当時の図面を取り寄せて見るものいいでしょう。東北大の調査によれば、東日本大震災において仙台市の宅地造成地では、盛り土は、切り土の26倍も全壊割合が高かったということがわかっています。

もうひとつ注意点が。それは【図3】のような「擁壁(ようへき)」。過去に造成された擁壁はたとえば大谷石など、現在ではその強度から決して使わない素材が使われていたり、現在では義務となっている、雨水を適切に排水するための水抜き穴がないなど、現在とは異なる基準で工事されているケースが多いものです。

【図3】擁壁(ようへき)はその強度と、再建築時の利用可否を確認

このような土地で建物を新築したいと思っても、原則として現在の擁壁は使えず、新たに擁壁を造りなおすこととなります。この点についても前述の役所担当窓口で確認が可能です。敷地の大きさ、擁壁の高さにもよりますが、新たに工事をやり直すとなれば、数百万など結構な費用がかかることになるので注意しましょう。

【筆者紹介】

不動産コンサルタント 長嶋 修(ながしま おさむ)  http://nagashima.in/

不動産デベロッパーで支店長として幅広く不動産売買業務全般を経験後、1999年に業界初の個人向け不動産コンサルティング会社である、不動産の達人 株式会社さくら事務所を設立、現会長。以降、様々な活動を通して“第三者性を堅持した個人向け不動産コンサルタント”第一人者としての地位を築いた。国土交通省・経済産業省などの委員も歴任している。

2008年4月、ホームインスペクション(住宅診断)の普及・公認資格制度をめざし、NPO法人日本ホームインスペクターズ協会を設立、初代理事長に就任。また自身の個人事務所(長嶋修事務所)でTV等メディア出演 、講演、出版・執筆活動等でも活躍中。業界・政策提言や社会問題全般にも言及する。『マイホームはこうして選びなさい』(ダイヤモンド社)『「マイホームの常識」にだまされるな!知らないと損する新常識80』(朝日新聞出版)『これから3年不動産とどう付き合うか』(日本経済新聞出版社)『「空き家」が蝕む日本』(ポプラ社)他、著書多数。

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