2016.12.18
【売主様向け】築20年以上の木造住宅は「価値なし」ではない
一般的に、不動産査定では木造住宅が築20年を超えると建物価値はほとんどゼロに近い扱いを受けます。(≒査定上の評価はほとんどないのが実情)
買主様も「古い家は壊す前提」と考えることが多く、売主様もあまり建物価値を期待していないということも多いですよね。
しかし実際には、築20年以上でもしっかり管理されてきた建物は十分に使えるものが少なくありません。
「古いから価値がない」ではなく、適切に状態を証明してあげることで、市場での見られ方は大きく変わります。
安心材料をどう提示するか
築年数が経過した住宅を売り出す際に有効なのが、以下の2つです。
| ホームインスペクション(住宅診断) | 建物の状態を第三者がチェックし、劣化や不具合を明らかにする。 |
| 耐震基準適合証明書の取得 | 建物が現在の耐震基準に適合していることを証明する。 |
これらを準備して売りに出すことで、買主に「安心して買える家」という印象を与えられます。
ホームインスペクションとは?
ホームインスペクションとは、住宅の建物を対象として劣化状態や施工不具合の有無を調査することです。
建物の専門性が高いことから、ホームインスペクションを実施する人(=ホームインスペクター)は、建築士であることが一般的です。主に住宅の売買や建築のときに利用されますが、リフォーム時やメンテナンスの参考にすることや定期点検に利用されることもあります。
ホームインスペクションを依頼し、調査を実行した後には、調査報告書が提出されるので、それを後述する耐震基準適合証明書と一緒に開示しておくことで、「しっかり管理されて状態の良い建物」であるというエビデンスとすることができます。
耐震基準適合証明書とは?
耐震基準適合証明書とは、住宅などの建物の耐震性が建築基準法で定められた耐震基準を満たしているかを証明する書類です。以下は国土交通省で公開されている証明書のひな形です。
この証明書は、「耐震基準を満たした建物を建築」「既存の建物に耐震工事」といったとき、自動的に発行されるものではありません。取得したい場合は、申請が必要ですこし面倒です。
ただ、「耐震基準適合証明」を取っておくと前述したような「しっかり管理されて状態の良い建物」であるというエビデンスとして非常に有効になるだけでなく、買主にとって以下のような税制上の大きなメリットがあります。(物件が新しくなくともそれを補う材料を提示できるので、それだけ早く売れる可能性が高まるということです)
- 住宅ローンを借りやすくなる
- ローン残高の1%が10年間控除される「住宅ローン控除」が使える
- 登記料(登録免許税)が安くなる
- 不動産取得税が安くなる
- 固定資産税が安くなる
- 地震保険料が安くなる
①住宅ローンを借りやすくなる
多くの金融機関は『新耐震基準に適合している物件である』ことを住宅ローンの融資条件としています。そのため築20年以上経過しているような古めの家では、住宅ローンを借りられる金融機関が限られます。そのようなときに耐震基準適合証明書を取得すれば、住宅ローンを借りやすくなります。
②ローン残高の1%が10年間控除される「住宅ローン控除」が使える
一定の住宅ローンを借りて、要件を満たすマイホームを取得した場合に所得税と住民税の一部が控除される「住宅ローン控除」。
これは買主にとってうれしいこと。それだけ、早く、高く売れる可能性が高まるということです。
②登記料(登録免許税)が安くなる
不動産を購入した際には、登記にかかる「登録免許税」が発生します。
耐震基準適合証明書を提出すると、この税率が軽減されます。
| 登記の種類 | 通常 | 軽減措置 |
| 所有権の保存 | 0.4% | 0.15% |
| 所有権の移転 | 2.0% | 0.3% |
出典:『登録免許税の税率の軽減措置に関するお知らせ』(法務局)
例えば2,000万円の建物なら、通常40万円かかる所有権移転登記が6万円にまで減額される計算です。
③不動産取得税が安くなる
不動産取得税は、不動産購入時に都道府県に納める税金です。
耐震基準適合証明書があると、土地は45,000円以上が減額、建物は築年数によりますが減額を受けられます。
④固定資産税が安くなる
固定資産税は毎年1月1日時点の所有者に課税されますが、住宅が一定の条件を満たすと軽減措置を受けられます。
固定資産税の軽減幅は大きく、最大で2分の1になりますので、住宅ローン控除と合わせると購入後のランニングコストを大きく抑える効果があります。
⑤地震保険料が安くなる
耐震基準に適合した住宅は、地震保険料の割引対象になります。
割引率は10%程度で、耐震等級・築年数などにより変動します。
例えば年間3万円の地震保険料なら、3,000円の節約になります。長期契約(5年・10年)を組めばさらに累積効果が大きくなります。
ホームインスペクションの事例。強く勧める理由。
築20年以上の中古住宅を売り出す方、それも大事に建物を使ってきた方が、業界の査定方法や価格に不安を抱いているケースは非常に多いものです。長く丁寧に使ってきたからこそ、その価値を誰よりもわかっているはずなのに、何も知らない不動産営業マンに雑な査定をされたら、だれでも不満に思いますよね。
とはいえ、丁寧に使ってきたということを客観的に伝えないと、やはり査定する側にもそれは伝わらないのは一定うなずけます。
ならば、ホームインスペクションや耐震基準適合証明書をつけて、わかりやすく情報開示してはいかがだろうか、というのが私の提案です。建物に自信のある住宅は「ホームインスペクション済み」として、堂々と情報開示して売り出せばよいのです。
ホームインスペクションは、「ちゃんと見ないと気付かないけど、査定に響く重要なこと」をピンポイントで指摘してくれます。例えば、建物に関する問題で多い「水にまつわるもの」だとこんな事例があります。
【写真1】
【写真1】は、電気配線か何かを通すための穴が開いています。これをこのまま放置しておくと危険です。モルタル外壁の先には【防水シート】があり、それを突き抜けているはずです。壁内に雨水が浸透して大変なことになってしまうでしょう。処置はモルタルやシーリング剤などでただふさぐだけ。それだけでいいのです。
【写真2】
【写真2】は床下に水がたまっていて、木部が腐ったりカビが生えていた物件です。建物そのものには問題がないのですが、この写真を見て、何が悪いかお分かりになりますか。正解は「通気口と外構部分の高さが同じ」です。通気口と外構部分のGL(地盤面)には一定の高低差がなければ、やはり雨水などが入ってきます。建物を造る人と、外交を設計・工事する人が別の場合、このようなことが起こるのです。このケースの場合、木部の腐食やカビの部分を取り替え、外構をやり直して解決しました。早期発見ができたので費用は数十万で済んでいます。
まとめ
- 築20年以上の木造住宅であっても、それが価値のあるものかどうかは日々のメンテナンス次第
- とはいえ、一般論としては価値の高くないものと思われやすいため、ホームインスペクションや耐震基準適合証明書の取得により、価値のある物件であると証明することが効果的。
- わからないことだらけという方は、プロに相談するのも手。






