2026.10.25
中古住宅の盛土は全壊率「26倍」の差。購入前に造成地のリスクを地図と擁壁で見分ける方法
丘の上の住宅地は、眺めがよく、水害の心配も少なそうに見えます。横浜のように坂の多い街では、高台の分譲地で中古戸建を探す方も多いと思います。ただ、その平らな土地が、もともと山だったのか、谷だったのかまで確かめている方は、多くありません。
結論からお伝えします。同じ団地の中でも、谷を埋めて造った「盛土」と、山を削って造った「切土」では、地震のときの被害が大きく違います。東日本大震災で被害を受けた仙台市の造成団地では、盛土の住宅の全壊割合が、切土の26倍を超えました。盛土かどうかは、国が公表している地図と古い地図、そして擁壁を見れば、購入前にかなりの程度まで確かめられます。
目次
同じ団地でも、盛土と切土で被害は26倍違った
東日本大震災の仙台の造成団地で起きたこと
東北大学の研究チームは、東日本大震災のあと、1960年代に造成が始まった仙台市の2つの団地を調べました。そのうちのひとつ、南光台団地では、約6,500棟のうち48棟が全壊しています。同じ面積あたりで比べると、盛土の住宅の全壊割合は、切土の26.46倍でした(出典:日本経済新聞「住宅全壊『盛り土』地盤は26倍 仙台で東北大調査」2012年)。
見落とされがちなのが、切土と盛土の境目です。境目に建つ住宅の全壊割合も、切土の25.68倍と、盛土とほとんど変わりませんでした。造成地では、1つの敷地の中に、削った部分と埋めた部分がまたがっていることがあります。
壊れた原因は、揺れより「地盤の沈み」だった
この調査では、全壊・半壊の原因の約8割が、地盤が不均一に沈む「不同沈下」や、地盤の亀裂によるものでした。地震の揺れそのものが直接の原因になったのは、一部にとどまります。
つまり、建物をどれだけ頑丈にしても、その下の地盤が沈めば家は傾きます。中古住宅の耐震性を確かめるのと同じくらい、その家が建っている土地の成り立ちを確かめることが大切です。

盛土かどうかを地図で確かめる方法
国が公表している「大規模盛土造成地マップ」を見る
大きな盛土は、地図で確かめられます。2020年3月までに、全国すべての自治体が「大規模盛土造成地マップ」を公表しました。全国1,003の市区町村に、51,306か所、面積にして約10万haの大規模盛土造成地があります(出典:国土交通省 報道発表 2020年3月30日)。
マップに載る基準は、次のとおりです。
| 種類 | 造り方 | マップに載る基準 |
|---|---|---|
| 谷埋め型 | 谷を土で埋めて平らにする | 盛土の面積が3,000㎡以上 |
| 腹付け型 | 斜面に土を盛って平らにする | もとの地盤の傾きが20度以上で、盛土の高さが5m以上 |
マップは、各自治体のホームページや、国土交通省のハザードマップポータルサイトで見られます。なお国土交通省は、大規模盛土造成地がすべてただちに危険というわけではない、としています。
地図に載らない盛土は、古い地図と比べて探す
マップに載るのは、基準を超える大きな盛土だけです。「マップに載っていない=盛土ではない」とは言えません。
そこで役に立つのが古い地図です。国土地理院の古い地形図や、新旧の地図を見比べられる「今昔マップ」で、造成される前のその場所を見てみましょう。今は平らな住宅地でも、昔の地図で谷筋や沢、ため池があった場所は、埋めて造った可能性があります。地名に谷・沢・池などが入っている場合も、ひとつの手がかりになります。地名の読み方は「地名が語る「土地の履歴書」」でまとめています。
擁壁を見れば、造成の質が分かる
高さ2mを超える擁壁は、検査済証があるかを聞く
造成地の住宅には、敷地の土を支える擁壁がつきものです。高さが2mを超える擁壁は、建築基準法の確認申請が必要な工作物にあたります。きちんと手続きを経て造られた擁壁なら、確認済証や検査済証が残っているはずです。売主さんや不動産会社に、擁壁の書類があるかを聞いてみましょう。
2023年5月には、盛土による災害を防ぐ「盛土規制法」が施行されました。物件が規制の区域に入っているかは、重要事項説明で説明されます。聞き流さずに、その意味を確かめておきたい項目です。
水抜き穴、ひび、継ぎ足しを見る
現地では、擁壁を自分の目で見ます。特に注意したいのは次の3つです。
- 水抜き穴:擁壁の裏にたまった水を逃がす穴がない、または詰まっている
- 素材:大谷石など、今は擁壁に使わない素材で造られている
- 形:古い擁壁の上に、ブロックなどを継ぎ足して高くしている
こうした擁壁は、将来建て替えるときに使えないと判断されることがあり、造り直すと数百万円かかることもあります。擁壁のひびや膨らみ、周りの道路や塀のひび割れも、地盤が動いているサインのことがあります。
盛土の土地を選ぶときに確かめること
地盤調査の報告書と建物の傾きを確かめる
盛土の土地にある家を検討するなら、建物が建つ前に地盤をどう調べたかを確かめます。2000年以降に建てられた家なら、地盤調査の報告書があるはずです。売主さんに見せてもらい、見せてもらえない場合は、地盤が弱い可能性も考えます。分譲地がどのように造成されたかは、市区町村の建築審査を担当する窓口で確認できることもあります。
あわせて、建物の傾きや基礎のひび割れも見ておきましょう。地盤の沈みは、まず建物の傾きとして現れます。中古住宅の地盤の調べ方は「中古住宅の地盤調査はできる?地盤が重要な理由と調べ方を解説」でも紹介しています。
盛土だから即NGではない
盛土の土地がすべて危ないわけではありません。造成の時期や方法、締め固めの丁寧さ、擁壁の状態によって、安全性は大きく変わります。大事なのは、盛土かどうかを知らないまま買うのではなく、知ったうえで、その土地の造成の質を判断することです。

しあわせな家では、建築士の資格を持つ「技術営業」が、地図で土地の成り立ちを確かめ、内覧のときに擁壁や建物の傾きまで見て判断します。造成に不安が残る土地なら、「この物件はやめておきましょう」と率直にお伝えします。工事でも売上が立つ仕組みなので、契約を急がせる必要がないからです。
まとめ
同じ団地の中でも、盛土と切土では地震の被害が大きく違い、東日本大震災の仙台市の造成団地では盛土の全壊割合が切土の26倍を超えました。その多くは揺れではなく、地盤の沈みが原因です。大規模盛土造成地マップと古い地図で土地の成り立ちを確かめ、擁壁の書類と状態を見て、地盤調査の報告書と建物の傾きを確かめる。この順番で見ていけば、高台の物件もあきらめずに選べます。
気になる土地があれば、地図と現地の両方で一緒に確かめましょう。初回相談で、物件を見るときのポイントをお伝えするところから始めます。
このコラムを書いた人:山田 篤 (株)しあわせな家 代表取締役
積水ハウスで13年、起業して18年。「中古住宅購入×リノベーション」を軸に、売上高ではなくサービスの質で日本一を目指す。
甘い社名とのギャップが大きい「技術営業」という名のゴリゴリの目利き集団を率いて、「お客様のしあわせな家」を追求しています。




