2026.10.23

中古住宅の境界は大丈夫?

中古戸建を見ていると、土地の面積や形は、登記簿や図面に書いてあるとおりだと思いがちです。隣の家との境目も、ブロック塀があれば、そこが境界だろうと考える方が多いと思います。けれど、首都圏の土地では、その前提が成り立たないことが珍しくありません。

結論からお伝えします。首都圏では、市区町村などが土地の境界を一筆ずつ調べる「地籍調査」が、あまり進んでいません。神奈川県で15%、東京都で25%です。法務局にある「公図」は、明治時代の図面に由来するものが多く、正確ではありません。頼りになるのは測量図ですが、その精度は作られた年によって大きく違います。購入前に測量図の作成年と現地の境界標を確かめ、契約で境界を明らかにしてもらうことが大切です。

首都圏では、境界を調べる地籍調査が進んでいない

地籍調査の進み具合は、神奈川15%・東京25%

地籍調査は、市区町村などが土地の一筆ごとに、所有者や境界、面積を調べて、正確な地図を作る調査です。この調査が終わった地域では、境界がはっきりした地図が法務局に備えられます。

ところが、その進み具合には大きな地域差があります。

地域 地籍調査の進捗率
全国 53%
埼玉県 33%
東京都 25%
千葉県 19%
神奈川県 15%

(出典:国土交通省関東地方整備局「地籍整備関係」)

神奈川県では、調査が終わっているのは対象の地域のおよそ7分の1です。残りの土地では、境界がはっきりした地図がまだありません。もちろん、売買や分筆のときに確定測量を済ませている土地もあります。ただ、それは土地ごとに確かめないと分かりません。

法務局の「公図」は、明治時代の図面に由来するものが多い

地籍調査が終わっていない地域で、法務局に備えられているのが「公図」です。公図の多くは、明治初期の地租改正のころに作られた図面に由来しています。そのため、公図で分かるのは土地の並び順やおおよその形までで、面積や長さは正確ではありません(出典:三井住友トラスト不動産「境界・筆界Q&A」)。

物件資料の公図を見て「この形の土地」と思い込むのは危険です。公図は、あくまで目安として見てください。

測量図の精度は、作られた年で読み分ける

昭和の古い測量図は、隣と立ち会わずに作られたものがある

公図より頼りになるのが、土地を分けたときなどに法務局に出される「地積測量図」です。ただし、地積測量図の精度は、作られた年によって大きく違います。

作られた時期 測量図の特徴
昭和30年代後半〜昭和53年ごろ 公図に線を引いて面積を出した図面が少なくない。隣地との立会いは義務ではなかった
昭和53年ごろから 境界標を図面に書くことが義務に
平成5年から 境界標がない場合は、近くの動かないものとの位置関係を書くことに
平成17年の法律の施行以降 境界の点の座標が記録され、現地で位置を再現しやすい

古い測量図ほど、現地で境界の位置を再現しにくくなります。測量図があっても、その作成年まで見ておかないと、安心材料にはなりません。

平成18年ごろ以降の測量図には、座標が記録されている

平成17年、つまり2005年に新しい不動産登記法が施行されてからは、境界の点を座標で記録するようになりました。おおむね平成18年以降の測量図なら、境界標がなくなっていても、座標から位置を復元しやすくなっています。

地積測量図は、すべての土地にあるわけではありません。物件資料に測量図がなければ、法務局で取れるかを不動産会社に確かめてもらいましょう。

築浅の戸建住宅の外観

現地で境界を確かめる方法

敷地の角に、境界標があるかを探す

内覧のときは、建物だけでなく、敷地の角を一つずつ見て回りましょう。境界には、コンクリートの杭や金属のプレート、道路に打ち込まれた鋲など、「境界標」と呼ばれる目印が入っているはずです。

境界標が見当たらない角があれば、境界がはっきりしていない可能性があります。工事などでなくなっていることもあります。測量図に書かれた境界標と、現地の境界標が合っているかも見ておきたいところです。

塀・屋根・木の枝の「越境」を見る

次に見るのが「越境」です。隣の家の屋根やエアコンの室外機、木の枝が、こちらの敷地にはみ出していないか。反対に、こちらの塀や物置が、隣にはみ出していないか。ブロック塀も、どちらの家の持ち物なのかが決まっていないことがあります。

境界の問題は、感情の問題になりやすいものです。そして、境界があいまいなまま買うと、将来売るときに買い手がつきにくくなったり、増改築に制限が出たりします。境界は、隣とのトラブルの話であると同時に、自分の土地の大きさと価値の話でもあるのです。

契約で境界を明らかにしてもらう

「確定測量」と「現況測量」は違う

測量には、大きく分けて2つあります。隣の土地の所有者や道路を管理する役所に立ち会ってもらい、境界を確認して作るのが「確定測量」です。一方、今ある塀や境界標をもとに、立会いなしで測るのが「現況測量」です。境界を確かめたという意味で頼りになるのは、確定測量図や、隣地の所有者と交わした「境界確認書」です。

売買契約の前に、境界をどこまで明らかにしてから引き渡すのかを、売主さんと取り決めておきましょう。私道に面した土地の場合は、道路の持分にも注意が必要です(「私道持分0の物件を買うとどうなるのか?」)。

話し合いで決まらないときは「筆界特定制度」がある

隣との話し合いで境界が決まらないときには、2006年1月に始まった法務局の「筆界特定制度」があります。専門家の意見を踏まえて、法務局の登記官が境界の位置を示してくれる制度です。ただ、時間も手間もかかります。購入前に分かっていれば、そもそもそうした土地を選ばない、という判断もできます。

住宅購入の相談風景

しあわせな家では、建築士の資格を持つ「技術営業」が、物件資料の公図や測量図の作成年を確かめ、内覧のときに敷地の角の境界標や越境まで見て回ります。境界に不安が大きい土地なら、契約の条件で何を求めるべきかをお伝えし、場合によっては「この物件はやめておきましょう」と率直に申し上げます。工事でも売上が立つ仕組みなので、契約を急がせる必要がないからです。

まとめ

首都圏では地籍調査があまり進んでおらず、神奈川県で15%、東京都で25%にとどまります。法務局の公図は明治時代の図面に由来するものが多く、正確ではありません。測量図の作成年で精度を読み分け、現地で境界標と越境を確かめ、契約で境界をどこまで明らかにするかを取り決める。この順番で確かめれば、買ったあとに土地の境目で悩むことは防げます。

気になる土地があれば、測量図と現地の両方を一緒に確かめましょう。初回相談で、土地を見るときのポイントをお伝えするところから始めます。

このコラムを書いた人:山田 篤 (株)しあわせな家 代表取締役

積水ハウスで13年、起業して18年。「中古住宅購入×リノベーション」を軸に、売上高ではなくサービスの質で日本一を目指す。
甘い社名とのギャップが大きい「技術営業」という名のゴリゴリの目利き集団を率いて、「お客様のしあわせな家」を追求しています。

facebook

twitter

line