2026.09.26

私道持分0の物件を買うとどうなるのか?

中古戸建を探していると、相場より少し手頃な物件の資料に「前面道路:私道」「持分なし」と書かれているのを目にすることがあります。道路は誰でも通れるものだと思っていると、この一文の意味はなかなかピンときません。

結論からお伝えします。私道持分0の物件は、それだけで「買ってはいけない物件」ではありません。ただし、家の前の道路が他人の土地である以上、ガス管や水道管の工事のたびに持ち主の承諾が必要になり、住宅ローンや将来の売却にも影響が出ることがあります。大切なのは、契約前に道路の持ち主と「通行・掘削の承諾書」を確認し、そのリスクが価格に見合うかどうかを判断することです。中古住宅の売買に1,000件近く関わってきた経験から、何が起きるのか、どこを見ればいいのかを順番に整理していきます。

家の前の道路が「他人の土地」ということがあるのか

道路には「公道」と「私道」がある

普段歩いている道路には、国や自治体が持っている「公道」と、個人や会社が持っている「私道」があります。見た目はどちらもアスファルトの道路で、通っているだけではまず区別がつきません。

私道は、昔ひとまとまりの土地を分譲したときに、奥の区画へ入るための道として造られたものが多くあります。行き止まりの道や、数軒の家だけが面している細い道は、私道であることが珍しくありません。

家を建てるには、原則として幅4m以上の道路に2m以上接している必要があります。私道であっても、建築基準法上の道路として扱われていれば家は建てられます。つまり「私道に面している」こと自体は、建て替えができないという意味ではありません。

「私道持分0」とは、道路の持ち主に自分が含まれていない状態

私道の持ち方には、大きく分けて2つのパターンがあります。沿道の家の持ち主たちで道路全体を共有しているパターンと、道路を細かく分けて、それぞれが一部分ずつ持っているパターンです。

どちらの場合も、沿道の家を買えば道路の持分も一緒についてくるのが一般的です。ところが、何らかの事情で道路の持分がまったく含まれていない物件があります。これが「私道持分0」の状態です。毎日通る家の前の道が、自分以外の誰かの土地だということになります。

高台から見た住宅街の街並み

私道持分0の物件を買うと、何が起きるのか

ガス管・水道管の工事に、道路の持ち主の承諾が必要になる

私が最も気にするのがここです。ガス管や水道管、下水管は、多くの場合、前面道路の下を通って家の中へ引き込まれています。これらを新しくしたり、引き込み直したりするには、道路を掘らなければなりません。

他人の土地を掘る以上、道路の持ち主の承諾が必要です。承諾が得られなければ、ガス会社や水道の工事業者が工事を引き受けてくれないこともあります。中古住宅を買ってリノベーションをする場合、配管の交換は後回しにしない方がいい工事ですから、この問題は購入後すぐに表に出てくる可能性があります。

通行料を求められたり、車の通行でもめたりすることがある

道路の持ち主が「自分の土地を通るなら通行料を払ってほしい」と求めてくるケースがあります。車の出入りを制限されたり、道路に物を置かれたりといったトラブルも、実際に起きています。

建築基準法上の道路であれば、持ち主が勝手に通行止めにすることは簡単にはできません。それでも、持ち主との関係がこじれてしまうと、毎日の暮らしの中でずっと気を遣い続けることになります。持ち主が代替わりしたとたんに態度が変わる、ということもあります。

住宅ローンが通りにくく、売るときにも買い手が限られる

金融機関によっては、私道持分0の物件を担保として低く評価したり、道路の持ち主の承諾書を融資の条件にしたりします。希望した額を借りられない、あるいは審査そのものが通らないこともあります。

同じことは、将来この家を売るときにも起こります。次の買主も同じ理由で住宅ローンが組みにくいため、買い手が限られ、売却に時間がかかったり、価格を下げざるを得なくなったりします。買うときの安さは、売るときの売りにくさと表裏一体です。

木造戸建住宅の外観

なぜ物件情報を見ているだけでは気づけないのか

「私道負担なし」は「私道の心配なし」という意味ではない

ポータルサイトの物件情報には「私道負担:無」という項目があります。これを見て「私道の問題はない物件なのだな」と受け取る方が少なくありません。

ところが、この項目が示しているのは、売り出している土地の中に道路として使われている部分が含まれているかどうかです。前面道路が他人の私道で、自分には持分がまったくない物件でも、売る土地そのものに道路部分がなければ「無」と表示されることがあります。つまり、私道持分0の物件ほど「私道負担:無」と表示されていても、おかしくないのです。

道路の持ち主は、道路部分の登記を取らないと分からない

家の前の道路が誰のものかは、道路部分の土地の公図と登記情報を取って、初めて分かります。物件資料に書かれていないことも多く、重要事項説明の段階で初めて知る、ということも起こりえます。

そして、登記を取って持ち主が分かったとしても、それが暮らしや工事、ローンにどう影響するかまで読み取るには、建物と法規の両方の知識が要ります。私道持分0は、物件の写真や間取り図をどれだけ眺めていても気づけない落とし穴の典型です。

私道持分0の物件は、避けるべきなのか

「通行・掘削の承諾書」が取れるかどうかが分かれ目

私道持分0でも、道路の持ち主全員から「通行・掘削の承諾書」を取り付けられれば、リスクは大きく下げられます。承諾書とは、「この道路を通ること、配管工事のために掘ることを認めます」という持ち主からの書面です。将来の持ち主にも引き継がれる内容になっているかも、あわせて確認しておきたいところです。

承諾書がすでにあるなら、内容を確認します。まだない場合は、契約前に売主に取得をお願いするか、承諾書が取れることを契約の条件にしておくのが、私がお客様におすすめしている進め方です。

持ち主が誰か、何人いるかでリスクの大きさが変わる

同じ私道持分0でも、道路の持ち主の状況によってリスクの大きさはまったく違います。

道路の持ち主の状況 承諾の取りやすさ リスクの大きさ
沿道の住民が数人で共有している 比較的取りやすい 小さい〜中程度
1人の個人・1つの会社が持っている 相手次第で大きく変わる 中程度
相続で持ち主が多数・所在が分からない、会社がすでにない 取るのが非常に難しい 大きい

特に3つ目のように、持ち主と連絡がつかない場合は、承諾書を取ること自体ができません。こうした物件は、よほどの理由がない限り慎重に考えた方がいいと、私ははっきりお伝えしています。

安さの理由として納得できるかを、価格と一緒に考える

私は「安さには必ず理由がある。その理由が許容できるかどうかを判断するのがプロの仕事だ」と考えています。私道持分0は、その「理由」のひとつです。

承諾書が取れていて、持ち主との関係も良好で、立地や建物がとても気に入っている。そうであれば、手頃な価格で良い家を手に入れる選択肢になり得ます。反対に、承諾書が取れる見込みがなく、リノベーションで配管を交換したい家なら、いくら安くても見送る判断もあります。大切なのは、知らずに買うのではなく、知ったうえで選ぶことです。

私道持分0の物件に限らず、建物として再生できるかどうかの判断が必要な物件については、「再建築不可物件のリノベーションは可能?メリット・デメリットも解説」でも詳しくまとめています。内覧時に何を聞くべきかは「中古住宅の内覧で忘れずに聞くことは? 内覧ポイントやマナーも確認」も参考にしてください。

まとめ

私道持分0の物件は、それだけで避けるべき物件ではありません。ただ、家の前の道路が他人の土地である以上、配管工事や通行、住宅ローン、将来の売却に影響が出る可能性があります。そして、そのことは物件情報を見ているだけではほとんど分かりません。

道路の持ち主まで確認するのは手間のかかる作業ですが、仲介手数料のために契約を急ぐ必要がない私たちだからこそ、そこまで一緒に見ることができます。気になっている物件の前面道路が私道だったら、契約の前に一度見せてください。初回相談で、その物件を選んでいいのかどうか、一緒に整理するところから始めましょう。

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