受け継いだものを生かす道を探る
賃貸古民家リノベーション Part1

賃貸
東京都文京区 中古戸建を大規模リノベーション
築年数:60年

文京区本郷、都心の風景の中にひっそりと、木々に囲まれた静かな古民家がありました。 ふたりの娘さんが受け継いだものの、住む予定がなく空き家となってしまっていました。 そこには眠らせておくには勿体無い魅力がいっぱい。 古いものを壊してしまうのではなく、生かす賃貸古民家リノベーションの提案です。

建て替えだけが解決策ではない。
リノベーション+賃貸経営という選択肢。

築60年という歴史ある古民家、ここは医院併用住宅でした。駅から3分という好立地、近隣には大学もあり、都心でありながら静かで暮らしやすい場所。初めは建て替えを考えていたという娘さんでしたが、諸々の事情により話がスムーズに進みませんでした。古い建物は築後に法律の改正があったり、古い土地柄境界線が曖昧だったり、今の建築基準に合わないことも少なくないのです。
このままでは荒れてゆくばかりで近隣の家にも迷惑がかかってしまう…どうすれば…というご相談を受けました。そこでご提案したのが「古民家の魅力を活かした、3つの賃貸住宅にセパレートするリノベーション」です。

新耐震基準を満たすことで、
古い家のいいところを残した特別な建物に。

人が住まなくなると家はダメになってしまいます。ここも空き家になって歳月が過ぎ、庭は雑草で生い茂り、建物の劣化も進んでいました(写真は着工前の様子)。
古い家のリノベーションというと、まず考えるのが「今の耐震基準を満たせる建物にすることができるか?」ということ。内壁を剥がして構造体を明らかにし、どこに補強が必要かを見極めて設計することで、新耐震基準に適合する家にすることができます。3つの住宅にセパレートするには、大きな間取り変更も必要。パートナーである構造の専門家さんのチェックを受けながら、確実な設計をしてゆきます。
古い建物にあるのはマイナス面だけではありません。新建材とは違った魅力のある部材や建具、今は失われた技術のパーツ、特別な建物になりうる要素を持っているんです。賃貸経営を考えた時、それは付加価値となり強みになります。

1階は庭の藤棚を生かした縁側のある部屋に。

都心では珍しい広さのある庭。雑草を取り除くと、立派な藤棚が現れました。他にも桜、楓、柿の木と、年月を経たからこそある木々。これだけのものを専用庭から愉しめる部屋は、賃貸住宅ではなかなかありません。
藤棚の真下には、テーブルを出せる広さがある縁側デッキを設置。庭に面したリビングの一角に畳タイルを埋め込み、天井近くまである大きなサッシを設置して、外の心地よさを感じられる縁側感覚の空間をつくりました。樹脂製の畳は、い草の畳よりお手入れしやすく賃貸向き。季節を楽しみたい入居者の方の心に響くデザインを心がけました。

Pick Up

味わいある建具はそのまま再利用。
セキュリティーにも配慮しています。

1階の部屋で特に目を引くのが、広い土間のある玄関部分。この味わいある玄関扉は、医院だった頃の扉をそのまま再利用しています。手前の大きなガラス戸も、別のところに使われていたパーツを再利用。もとは引き戸でしたが、吊り戸にして、敷居なしですっきり設置しました。古い建具は高さが低め、吊り戸だと少し床から浮かすことができるので、高さを出せる利点もあります。見た目は素敵だけどセキュリティーは?と気になる方もあると思います。実は外の共用玄関はオートロック。3つの住宅それぞれにも、モニタ付きインターホンもついているので安心です。

2階の南側は、屋根裏構造の魅力を
存分に味わえるデザインに。

「築年代から考えて、屋根裏構造に丸太の梁が使われているかも…という期待はありました。」とリフォーム担当岩田。天井を剥がして丸太の梁が出てきた時、すぐに屋根裏構造を全部見せるイメージが浮かんだそう。部屋の端から端まで伸びる屋根の野地板のラインと丸太梁のバランスが美しく、屋根裏が主役の部屋になりました。室内はシンプルに、キッチンはパーツを組み合わせて造作、収納の建具にはアンティーク調の木製扉を選んで、古い木部との調和を図っています。

南側の日差しを室内で楽しむインナーテラス。

2階南側のこの部屋には、ベランダがありません。でも日差しは十分に入ってきます。窓際の床の一部をタイルにして、インナーテラスをつくりました。
水が溢れても大丈夫なので、植栽を置いてもいいし、洗濯物を干す場所にも良さそうです。
タイルは瓦屋さんがつくった瓦のタイル、自然素材なので、無垢の床との相性もよく馴染んでいます。

古民家の良さを残しつつ
設備は最新のものに。

四角い箱のようなデザインのかわいい洗面スペースの奥には、ユニットバスや洗濯機置場もあります。古民家リノベーションと言っても、賃貸経営を考えれば設備は最新のものにしなければいけません。
洗面スペースには、古い建具のパーツを再利用して造作した鏡や小窓をデザイン。レトロな雰囲気の材料を使いながらも、モダンなデザインなので、ユニットバスが共存していても違和感がありません。
小窓の外は階段スペース、手の届かない階段上の窓や、照明器具のメンテナンスがここから出来るようになっています。

2階の北側は、丸太梁を活かしたロフトのある部屋に。

この部屋は、他の2つと比べると専有面積が小さく、日差しの弱い北側。天窓で光を取り込み、屋根裏スペースを使ってロフトをつくりました。
ここは野地板のままではなく、断熱材を入れて屋根裏を貼り替え、雨音や夏場の温度上昇に配慮しています。
ベランダからは庭の全景が見渡せ、周りの建物との距離もあるので、広い空間を独り占めしているような気分が味わえます。室内の面積が小さくても、採光や空間づくりを工夫したり、眺望の充実を図ることで、賃貸としても十分お得感のある設計が可能です。

Pick Up

既存の梁をカットして組み合わせる
高度な職人技で実現したカウンター。

この部屋で一番特徴的な部分は、やはりこのロフトの形状。味わいある既存の丸太梁を活かして、ちょうど天窓の真下にカウンターを造作。ロフトの床とカウンターとの間に足を入れて座り、見上げると天窓から空が見える設計です。夜空を眺めながらちょっと一杯…なんて、贅沢な時間が過ごせそう。建物の構造の要である梁に手を入れるには、高度な技術を要します。こんなデザインが実現できるのも、信頼する大工さんの腕があってこそです。

空き家問題のひとつの解決策として。

「空き家は残念ながら増え続ける傾向にあります。突然受け継ぐ時が来て、戸惑っているオーナーさんも多い。賃貸のための古民家リノベーションが解決策のひとつになればと思います。」と、賃貸管理のエキスパートで、この建物の管理も担当する佐藤は言います。
「リノベーションは、オーナーさんにとっては投資です。立地のニーズに合った、きちんと収益があげられる、質の高いリノベプランのご提案をしてゆくことが大切なんです。しあわせな家のリノベーションは各分野のプロフェッショナルに支えられています。古民家は近年の建物とは違った難しさがあります。今回も築60年という年代物、各分野の知恵を集結できたから実現したプランだったと思っています。」
今回の賃貸古民家リノベーションは、6~7年で投資を回収できるプラン。新築ではなく、リノベーションだから出来たことがあったと感じます。

2階の1室は「東京デザイン室」になりました。

ここは「本郷菊坂ハウス」と名付けられました。
3つの賃貸住宅のうちの一つ、屋根裏構造が印象的な「Sakura」に、しあわせな家の東京デザイン室をオープンしました。都内物件でのご相談場所としていた、表参道デザイン室からの移転です。
古民家リノベーションのモデルルームとしてもご覧いただけます。
古民家の面影残る部材たちが、今も本郷菊坂ハウスの一部となって生きています。年月にしかつくれない味わいを、ぜひ体験しにいらしてください。

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