鮮やかな色使いに魅せられる
パリのアパルトマンのようなリノベーション


- 東京都大田区 T様 中古マンションを中規模リノベーション 家族構成:ご夫婦 築年数:47年
ご結婚を機にお住まいを探し始めたTさん夫妻、ご希望の立地は都心の駅近だったため価格も高く、選択肢が限られていました。専有面積を抑えた物件を選びながらも、色使いの妙で素敵に空間をつくられた、まるでパリのアパルトマンのように大人可愛いリノベーションのご紹介です。

リフォーム済み再販物件をリノベーション。
Tさんは、資産運用の専門家FPバンクさんからのご紹介。ご自身で物件をお探しでしたが、希望の立地が競争率の高い地域だったこともあり、物件探しは難航していました。何度か買い負けを経験し、やっと見つけたのは物件は、リフォーム済みのものでした。リフォーム済なのにリノベーションする?という葛藤もあったそう。
「駅近立地で眺望も良く、物件自体のポテンシャルは高かったので、リノベーションすれば絶対に良くなるのがわかりました。でもきれいに仕上がっているのを壊してやり直すのは…という思いもありました。」と技術営業の岩田。
「リフォームの内容にも難があったんです。自分たちには必要ないスロープがあったり、洗濯機も入らない設計だったり…。」とTさん。
リフォーム済だと物件価格が上がりそうに思えますが、他の既存のまま物件とあまり変わらず予算内だったそう。

海外の写真を見ながらイメージを膨らませて。
Tさん邸の主役は、なんと言ってもこのオレンジ色のキッチンです。
「せっかくリノベーションするなら、Pinterestで見るような海外のキッチンみたいなビタミンカラーにしたいなと思ったんです。いろんなメーカーのショールームを見に行ったんですが、くすみカラーのキッチンが多くて…。トーヨーキッチンでこのキッチンに出会って、これだ!って思いました。狭いスペースでもアイランドにできるのもポイントでした。」と奥様。
強い色はコーディネートが難しく避けられがちですが、Tさん邸の配色は素晴らしいコーディネート例です。配色は全て奥様のセレクト。
「白は使わないって自分で決めていたんです。このキッチンのオレンジには何色が合うかな…って考えて、ピンクの壁も扉も決めていきました。ワクワクする空間にしたかったんですよね。」と奥様。
ふたりで一緒に料理したいから、水栓が2つある特別なキッチンを選びました。
料理がお好きなTさん夫妻、キッチンはふたり一緒に使うことを想定して、水栓が2つあり両側から使えるタイプのものを選びました。特にシンクは特殊な構造で、内臓プレートをスライドすることで、洗う・切る・盛付けの調理作業がシンク内で完結でき、ほぼ動かずに調理できるというコンセプトのキッチンです。
背面の壁には、くすみピンクのタイルをセレクト。老舗メーカー平田タイルのもので、釉薬の表情が美しいブライトとマットを組み合わせました。

こちらの物件は、動かせない壁が少ない構造だったため、間取りを柔軟に再設計することができました。「壁の位置、ここにしてもらって本当によかったです。 動きやすくてすごく使いやすいです!」とTさん。壁位置を躯体現しの梁に合わせず、最初に決まったキッチンのサイズに合わせ、アイランド型の利点を十分生かせるゆとりある通路を確保しました。躯体現しの梁はあえてモルタル仕上げのままとし、デザインのポイントにしています。


Pick Up

照明の美しいフォルムを生かす隠れた緻密な設計。
キッチンの印象的なペンダントランプは、名作HERE COMES THE SUN。内部のコッパーに反射してこぼれる光が、周囲のピンクとマッチして素敵です。
「最初は少し大きいかなと心配されましたが、岩田さんが設置位置を細かく検討してくれて、すごくいい感じになりました!」と奥様。
「通常ならキッチンと並行に2つラインを揃えて設置すると思いますが、前後にあえてずらしています。」と岩田。2つランプの高さと距離感が絶妙です。Tさん邸は、ダウンライトの位置も生活空間の用途に合わせて、細かに位置が決められています。一見しただけでは気づかないような細部に、緻密な計算があるんですね。
パリのアパルトマンを思わせる天井までピンクで統一された室内空間。
Tさん邸のリノベーションデザインのポイントは、配色の素晴らしさにあります。特に印象的なのは、リビングダイニングの全面ピンクの壁と天井です。子ども部屋やアクセントに色を使うことはよくありますが、ここまで大胆に色を使う事例はなかなかありません。思い浮かんだのはパリのアパルトマンのイメージ、大人可愛くて憧れるけれどコーディネートが難しそうなデザインです。Tさん邸は、一見可愛いピンクやオレンジといった色を使いながらも、引き締め色の黒やステンレス、エイジング感のある床材などクールな世界観と合わせることで、甘過ぎない絶妙なバランスでまとまっています。印象的なピンクの扉は、ベンジャミンムーアのhummingbirdで塗装、奥様のDIYによるものです。上部にはガラス専門店に別注したこだわりの型ガラスが入っています。



Pick Up

建具の小口部分の色を変えるという
新しい発想の色設計。
Tさん邸の建具は小口部分にも色が入っているのが印象的。リビングの入り口扉には、キッチンに合わせたオレンジ色が使われています。
「建具の表裏で色を変えることはよくありますが、小口にも色を入れるというのは自分の中にはない発想でした。アイデアいただいた奥様に本当に感謝したい、これめちゃめちゃいいです。」と岩田。
「扉開けたときに色が変わるって、めっちゃ可愛いなって思っていたんです。このピンクの扉はDIYで塗ったんですが、まだ既存のままの扉もあるので、そのうち全部塗り直したいですね。」と奥様。
マンションでも実現出来たウッドシャッターの窓が印象的なリビング。
ピンクの壁に、グレーのウッドシャッターが印象的なリビング。マンションはサッシ枠まわりを変更できないこともありますが、事前に組合に掛け合い実現できました。
「こちらのマンションは47年の築古ですが、管理がとてもしっかりしていて、リノベーションに対しても寛容でした。リフォームには難がありましたが、建物自体は十分お勧めできる条件のいい物件でした。」と岩田。築古の場合は特に管理のチェックは大切、事前にしっかり調査します。
掃き出し窓には大胆な柄のレースカーテンにタッセルを合わせました。大きな柄や存在感のあるタッセルはコーディネートが難しいアイテムですが、ピンクの壁紙のお部屋では目立ち過ぎずちょうどいいバランス、奥様のセンスが光ります。



Pick Up

ゾーニングとおこもり感をつくる
ダウンフロアリビング。
ダイニングのサビ鉄感のあるメタル調の床材に対し、リビングは柔らかい絨毯。質感の違いだけでなく、あえて段差もつくり、ゾーニングしています。これは床の高さを下げる「ダウンフロア」という手法です。
配管の関係で床の高さを変えることもありますが、ひとつづきのスペースを用途で分けるために、あえて段差をつくることがあります。一段下がったダウンフロアは、独立した空間を演出するとともに、落ち着いた感覚をもたらします。床が下がっている分天井も高く感じるので、ソファに座って過ごすリビングであれば、さらに開放的に感じられます。視線の高さの変化を考慮して設計することは、心地よい暮らしと直結する大事なポイントなんですね。
トーンを変えてスペースを切り分けることで
空間にメリハリが生まれます。
近年は洗面台をバスルームと分離し、独立させる設計が増えてきました。洗面を玄関先に設置すると来客時にも便利。Tさん邸も独立型、横の扉を開けばバス+ランドリースペースです。こちらの壁紙には大柄ながらアンティーク感のある落ち着いた花柄を選びました。濃いオレンジ色が可愛いPSのタオルウォーマーとの組み合わせが素敵です。「海外に行くとタオルウォーマーが必ずあって、日本は湿気が多いし、絶対欲しいなって思っていたんです。花柄の壁紙も可愛いでしょ。扉を開けたときに気分が変わるのがいいんです。」と奥様。
玄関まわりはあえて暗めにして、リビングとの明暗差をつくっています。濃い色の壁はベンジャミンムーアのevening skyで塗装、リビングに入ったらパッと明るくなって、より空間がひらけるように感じられます。



モリスの赤とevening skyの配色が
アートな印象のトイレスペース。
トイレの壁は、ウィリアム・モリスのキーカラーシリーズのシックな赤の壁紙をセレクト。床材のエイジング感のあるサビ鉄のような色味とマッチしています。
収納部分の扉は廊下の壁と同じベンジャミンムーアのevening sky、隣合う空間の色を取り入れて、赤で空間を切り分けながらも、どこかつながりを持たせています。シックな赤と深い紺色の組み合わせは美しいアートのよう。
収納扉の小口部分に、壁紙の赤を入れているのも、アクセントになって素敵です。

造作を駆使して予算を抑えつつ、高級感のある玄関デザインを実現
深い色合いとスチール質感でまとめられた高級感漂う洗面スペース、実は造作を駆使して予算を極力抑えてつくられたオリジナルデザインです。「専門業者に発注したら、かなり高額になってしまう内容ですが、オリジナルでつくることでコスト削減しています。人工大理石のボードなど素材は、自分がミリ単位のサイズ指定で無駄なく取り寄せ、造りは信頼する大工さんに依頼しています。」と岩田。設計デザインはもちろん岩田、人工大理石のボードと収納部分の間を少しあけるなど細部にもこだわったデザインです。洗面正面壁の後ろ側には隙間収納を造作、反対側には半アーチのSIC(シューズインクローゼット)をつくりました。玄関まわりのスペースを余すところなく有効活用しています。

Pick Up

間接照明を生かす、フロート設計と
モザイクタイルのセレクト。
高級ホテルのような雰囲気漂う、洗面収納の下からフワッとこぼれる光。この洗面台下の間接照明は、玄関のフットライトとしての機能も兼ねています。仕込みライトはネット購入で1000円程度で設置できたそう。
「この間接照明でタイルがキラキラして素敵なんです。」と奥様。タイルは奥様のセレクト。ベネツィアの工房で製作されたベネツィアンガラスのモザイクタイルで、光の反射で七色に変化します。上がり框のゴールドの見切りもポイントです。
玄関はSICまでつながる土間になっているので、スーツケースの出し入れなどもスムーズです。
自分らしさを大切に、夫婦それぞれのプライベートスペースを設定。
実は現在単身赴任中のご主人、間もなく一緒に暮らせるようになるそう。お互いの趣味を大切にされているお二人、それぞれのプライベートルームを設定しました。ご主人はお好きなブルーの壁紙をセレクト。これからベッドなど購入し、好みにつくり込んでいく予定。奥様のお部屋には推しのグッズがずらり。素敵にリノベーションしたリビングには趣味のものは置きたくないな…というとき、プライベートな空間を確保するのもアイデアですね。


海外旅行で出会った風景。
色使いのセンスが素晴らしい奥様、その源泉を伺ってみました。
「海外旅行が好きで、あれ素敵だったな、こういうのいいなって、目にしたものを自然と取り入れていました。日本の家は白系の壁紙が多いけれど、ピンクいいでしょ。ウッドシャッターも珍しいかもしれないけれど、風でパタパタしないし、手でさっと調光できていいですよ。」と奥様。
「建築オタク(笑)な岩田さんと日比さんと一緒にいろいろ相談しながらリノベーションできてとっても楽しかったです。本当のしあわせな家になりました!」とまとめてくださったTさん。取材の合間には前のお住まいのリノベ売却相談も出たり、気軽になんでも話せる雰囲気がいいですね。








