空間デザイナーさんと一緒につくった
隠れ家的ロフトとアトリエのある家

- 横浜市神奈川区 Y様 中古戸建を中規模リノベーション 家族構成:お子様と二人暮らし 築年数:29 年
ディスプレイデザインを手がける空間デザイナーのYさん、ご自宅の作業場が手狭となり、仕事とプライベートを分けられる、アトリエのある家をつくりたいと思っていました。プロの職人さんのような技術を 持つYさんにDIY で思う存分参加していただき、共同作業で完成したとても魅力的なお住まいです。
ものづくりのプロの家づくり。
Yさん邸のDIYの割合は、しあわせな家が携わったリノベーションの中でダントツの1位! 内装の90%はYさん自ら手がけられました。その腕前はプロそのもの。壁・天井すべて漆喰のYさん邸、戸建て一棟分の広範囲をお一人で塗られたというから驚きです。
「壁は絶対自分でやるって決めてたんです。漆喰塗りを職人さんに教えてもらえる講座にも参加して練習しました。目立たないところから始めて、玄関あたりが一番上手くなってると思う。」大変だった〜と笑顔で振り返るYさん、DIYとは思えないほどプロの職人さんのような仕上がりです。
玄関の壁に飾ってある印象的な箱の作品は、以前三部作でつくったものだそう。あえて見せた既存の柱との組み合わせが絶妙、まるでこの場所のためにつくられたもののようです。ものづくりのプロのセンスが至るところに光る、まさに「空間デザイナーYさんの家」が出来ました。
「共同作業できるところを探していて。」
お仕事柄、内装の現場に入ることがあるというYさん、ご自身もつくり手であるからこそ、お互い嫌な気持ちにならずに家づくりできるパートナーを探していました。
「自分でやれることはやりたいけど、手を出されたくない業者さんに無理を言いたくなかったんです。お互い嫌な気持ちになって絶対上手くいかないから。」とYさん。家をつくりたい人と専門家をつなぐSUVACOさんに「家づくりに参加することを許してくれて、やりたいことをやらせてくれるところを」と希望を出して、つながったのがしあわせな家でした。
「他に候補が2社あって、そこもいい業者さんだったけど、完全には自由に出来ない部分があったりで。こちらにお願いすることにしたのは、何より担当の奥野さん岩田さんとすごく気が合ったのが大きかったですね。もう話が合いすぎて!(笑) 何時間でも喋っていられるほどです。」とYさん。
内装工事費用は0円。その分耐震補強など構造体にしっかりと予算をかけました。
現在高校生の息子さんがいらっしゃるYさん、お引っ越しの時期を考えながら、ずっと物件を探されていました。息子さんの「引っ越してもいいよ」というタイミングで出会ったのがこちらの物件、眺めの良さと屋根裏に一目惚れして購入されたそう。築29年、築古と言われる手前ではあるものの、図面診断をしたところ耐震強度に問題があることが判明、構造体の補強に想定外の予算が必要となりました。そこで内装はYさんにお任せすることにして内装工事費用0円に、しっかりと耐震補強することができました。
「表面的な内装は自分でできるけど図面は苦手で。しあわせな家さんは図面診断とか内部構造のことも含めてプランを考えてくれるからいいですよね。」とYさん。しあわせな家のお客様担当者は設計の知識を持つ“技術営業”、図面診断をする専門家とも連携しています。
工事日程表にある「YさんDIY作業日程」、現場で並行作業が実現しました。
「工事日程表にYさんの予定も組み込まれていたんですよ。」と見せてもらった日程表には、大工さんなど他の職人さんの予定と同様に、YさんのDIY作業の予定が入っていました。「現場に来る職人さんに、ここはお客さんがやりますって伝えるとびっくりされましたけどね。」と技術営業の奥野。部分的にDIYで参加してもらうことはあっても、ここまで並行作業で現場に入ってもらうケースは、なかなか他ではないのかもしれません。やはりそこはYさんの技術力があってこそですね。
写真はYさんがご自身ですべて仕上げたロフト、みなとみらいの夜景が綺麗な眺望で、プロジェクターで映画を見たり、息子さんも気に入ってよく使っているそう。
建築のプロが思わずうなる自由な発想。
この屋根裏スペースは、もとは物置として使われていました。ぬいぐるみが乗っている梁の部分には天井板が設置されていて、もっと閉鎖的でした。
「床を芝生っぽくするキャンプ案とか、いろんな案があったんですよ。サンプル取り寄せて現場でどれにしようかってだいぶやったね。」とYさん、技術営業の奥野と楽しそうに振り返ります。
「この梁のロープ、すごくいいですよね! Yさんのアイデアは建築のプロでは思いつかないような発想があるんですよ。」と技術営業の岩田。
エアコンを隠す格子のカバーもYさんの造作。ロフト階段もYさんが見つけたデンマークDOLLE社のもので、デザインステップは見た目の良さだけでなく機能面でも優秀、幅狭でも昇降しやすい階段です。
「気の合う友だちと家をつくってるよう」三人で熟考に熟考を重ねた間取り。
ここは横浜みなとみらいが一望できる高台の立地、LDKを眺めのいい2階にすべくキッチンを1階から2階へ移動しました。屋根裏まで吹き抜けにする案や、部屋を上下に分ける“はんぶんこ”案など、ベストな間取りを求めて熟考に熟考を重ねたそう。「5カ月ぐらい?いろんな案考えましたね。ここにキャンプ椅子並べて三人で。屋根裏があったから夢が広がっちゃってね(笑)気の合う友だちと家をつくっているみたいに楽しかった」とYさん。「一周回って一番シンプルな案になりましたね。使い勝手どうですか?」技術営業奥野の問いに、「すっごくいいですよー♪」とYさん。図面を囲んでアイデアを出し合う楽しそうな様子が目に浮かぶようです。
Pick Up
独特の表情が美しい「木毛セメント板」の壁。
Yさん邸にはこだわりの素材がそこかしこに使われています。
「このグレーの壁の素材、めちゃめちゃ悩んで探していて、偶然ホテルの廊下に使われているのを見かけて、コレだ!って思ったんです。硬すぎない感じがいいでしょ。」とYさん。
「この建材は本来壁の中に入れる不燃材で、“木毛セメント板”というものです。最近こういう下地材をデザイン的に取り入れている建物を見かけるようになりました。」と奥野。
「メーカーごとに微妙に種類があるのを奥野さんが見つけて来てくれたんですよ、サンプル取り寄せて。すごく気に入っています。」とYさん。
実は見た目だけでなく、安全・断熱・調湿性など機能的にも優れた建材、これから仕上げ材としても出番が増えるかもしれません。
シンプルなキッチンは、素朴な質感と断面の積層が魅力的なラーチ合板をアクセントに。
キッチン自体はとにかくシンプルに。少し高めに設計したカウンターがポイント、リビングからキッチンの存在を感じさせません。面積の大きい壁面ですが、表情のある木毛セメント板なので、まったりとせず美しい佇まいです。アクセントはラーチ合板、素朴な質感が木毛セメント板とよく合います。
ラーチ合板も、もともと下地材として使われてきた建材ですが、最近では仕上げ材として使われることも多くなりました。ミルフィーユのような断面の積層がデザインポイントにもなります。「余った分で冷蔵庫横に隙間収納ラックもつくったの。」とYさん、さすがですね。冷蔵庫のマグネットをニッコリ顔に並べたのは息子さんだそう、グリーンもいっぱいで優しい雰囲気が素敵なキッチンです。
Pick Up
偶然現れた梁もデザインに活かして
キッチン空間にゆとりが生まれました。
キッチン上には梁の一部を見せた空間があります。実はこの空間、予定にはなかったものでした。
「キッチンの排気ダクトを確認するために天井を開口してみたところ、梁が出てきたんです。これ見せるのもいいねってことで設計変更しました。排気ダクトは隠したい、でもあまり微妙な幅だと意味がない、ギリギリのラインまで攻めました。」と奥野。
「なんかこの梁のサイズ感も可愛いくていいよね。」とYさん。
この空間があるとないとでは、キッチンに立ったときの開放感がぜんぜん違います。設計書をつくったら職人さんにお任せではなく、一緒に現場に入っているからこそできる柔軟な対応ですね。
既存のいいところを活かした的確なリメイクテクニックで、イメージが一新されました。
リビングの印象的な出窓は既存のもの。窓枠の化粧シートを剥がしたところ、きれいな木地が出てきました。窓枠は木地のままを見せ、窓台はリビングのテーマカラーに合わせてグレー調のシートに貼り替えたそう。あまりにきれいな仕上がりで、とてもDIYには見えません。出窓の天井にはアイアンバーを設置、「グリーンを吊るしたり、クリスマスのデコレーションに使ったり、いろいろ計画中です。ロフト階段にも付けたんです、便利そうでしょ。」とYさん。
TVボードのチェストは、もとの塗装を剥がして、再度着色してリメイクされたそう。TVにヴィンテージ調の家具を合わせるところ、Yさんのセンスが光っていますね。
Pick Up
既存柱の隙間をLEGOブロックで埋める
遊び心あるアイデアです。
2階に上がってLDKに入ると、まず目に入るのが柱のLEGOです。ここは耐震の関係で外すことのできない柱で、あえて化粧せずそのまま見せています。もともと壁の中にあった柱なので、傷やつなぎ目があったりするのですが、そんな隙間がLEGOブロックで埋められています。
「これ子どものおもちゃなんですよ。子どものものってなんか捨てられなくて…。ロフトのぬいぐるみや木琴もそう。これシンデレラフィットで可愛いいでしょ?」とYさん。
おもちゃがお住まいの一部に溶け込んでいるなんて素敵です。LEGOのこんな使い方、なかなか思いつかないですよね。
直線的構成がシンプルで美しい洗面台と
Yさんオリジナル造作収納棚。
洗面台はYさんのご要望をもとに、しあわせな家にて設置。既存の洗濯機置き場を無くして、その分洗面台を広く、ちょっとした作業ができるスペースをつくりました。直線的でスッキリとした洗面スペースです。洗濯機置き場は2階のLDKに近い場所へ移動、動線が良くなり家事が楽になったそう。
洗面台の向いには、Yさんオリジナルの造り付け収納棚が設置されていました。もともとあった凹みに、収納するものに合わせたサイズで造作。写真には写っていませんが、洗面スペースの入口は引き戸になっていて、内側に姿見鏡が設置されています。見た目だけでなく使い勝手がとことん考えられています。
目にした瞬間に心惹かれる玄関ホール。
玄関のドアは黒のシンプルなものに交換、開けた瞬間目に入る景色がとても素敵です。特にヴィンテージ風のキャビネットが目を惹きます。
「このキャビネットを下駄箱として使っています。はじめ下駄箱はつくるつもりだったけど、ここにはちょっと手の込んだ家具がいいなって思って。前からチェックしていた家具屋さんでサイズ的にもピッタリなものが見つかったんです。」とYさん。玄関は本日の取材に合わせて完成させて下さったそう。
「うわ〜いいですね! こんな風に出来上がったんですね。」と技術営業二人とも同じ反応。訪ねてくるたびに内装が仕上がっていくのが楽しみだそう。
玄関ホールの左側にはお仕事スペースのアトリエがあります。仕事とプライベートがここでしっかりと分けられています。
アトリエは1階の2部屋。お仕事をされながらまだまだリノベ進行中です。
ディスプレイのデザインだけでなく実際にものをつくっているYさん、作業するためのスペースだけでなく、工具や資材などの置き場も必要でした。アトリエとして1階の2部屋を確保、内装はまだまだ途中の段階ですが、ベースづくりは完了。床下に断熱材を施工して、床・壁・天井の下地はラワン合板やベニヤで上張りしています。塗装作業があるため換気扇は必須、便利なシンクも設置しました。窓にはすべて内窓を付け、作業音が気にならないように配慮しています。内装が仕上がるのが楽しみですね。
「完成して欲しくないほど楽しい時間でした。」
「本当にいっぱいわがまま聞いてもらいました。ぜんぜん嫌な顔せずとことん付き合ってくれて、挙句DIYも手伝ってくれちゃって。終わっちゃうのが嫌なくらい(笑)楽しかった。数カ月の間に一生のお付き合いをしたいくらいの関係が築けて、結果満足いくものが出来たなっていうのが本当に大きいです。」とYさん。
「こうやってDIYするとお客様との距離がより近くなるんです。すごく我々も楽しいし、建築って単なる箱とかものだけど、思いが入るんですよね。」と岩田。そういう思いがお客様の満足感につながっているんですね。
「一緒に楽しんでくれるのが嬉しいんですよね。次に来てくれる時に二人に見せたくてDIY頑張れるみたいなところがあった。」とYさん。「毎回想像の上をいく仕上がりですよ。」と奥野。“家づくりの仲間同士”のような会話が続きます。建物が完成したら終わりじゃなく、この関係はずっと続いていきそうです。