異国情緒あるアーチ開口が印象的な
予算に優しい団地リノベーション

- 横浜市 M様 中古マンションを中規模リノベーション 家族構成:一人暮らし 築年数:54年
娘さんが独立され一人暮らしとなったMさん、終の住処となるお住まいを考え始めました。はじめは予算内で買えるリノベ済物件を探していましたが、なかなか希望の物件に出会えず…。そんなとき出会ったのがしあわせな家、団地の良さを活かして予算内を実現した、アーチ開口が素敵な団地リノベーションです。
「知ること」から始める勉強内覧。
アパレル関係のお仕事をされていてセンス抜群なMさんですが、はじめはご自身でリノベーションすることは考えていなかったそう。
「予算を考えたらリノベ済物件が現実的かなと思っていました。でもいくつか相談に行ったところで“その予算では難しい”って言われてしまって…。」とMさん、予算増額や郊外立地を勧められ、すっかり気落ちしてしまったそう。
最初にお会いしたのはコンシェルジュの畠野。「とても沈んだご様子で来られたんです。弊社で行っている勉強内覧で、物件の選び方や予算内で出来ることなど、知っていただくところから始めました。出来る方向を一緒に探していくと、Mさんからどんどん素敵なイメージのご提案が出てきて、こちらも嬉しくなりました。」
「リノベーション会社って敷居が高いと思っていたので、一人暮らしのリノベでも大丈夫ですよーって言ってもらえたことが、自分にとってとても大きかったです。」とMさん。
「団地の良さを再発見できました!」
ご予算を考えると築浅の物件は難しそうということで、ご提案したのは団地リノベーション。団地は築古でも耐震的に問題ないものが多く、住宅ローンにも有利、管理費が安めなのも嬉しいところです。既存のままとリノベ済みの団地、3か所ほど勉強内覧に行きました。子どもの頃に団地にお住まいで、あまり団地にいいイメージがなかったというMさん、内覧時に再発見があったそう。
「窓が並んでる感じとか、アーチの入り口とか、建物の外観が結構好きだなって思ったんです。バルコニーの形もレトロな感じで可愛いし。」とMさん。
「この団地は管理もいいし、構造的に自由度が高かったのもよかったですね。」と技術営業の奥野。「そうそう、この壁取ってこんな風にしてもいいですねとか、ざっくりしたプランを聞いていたら、すごくイメージが浮かんで。自分の中に住みたい家のイメージがあったことに気づいたんです。」とMさん。最初はリノベ済み物件でいいと思っていたMさんにも、心境の変化があったようです。
住みたい家のカタチを考える楽しさに目覚めて。
リビングでゆったり映画を観るのがお好きというMさん、これを機に75型の大きなTVを購入しました。「絶対ここで最初に観るのはコレ!って決めていたスペイン映画があるんです。そこに出てくるスペインの古い家とか好きで、出来上がったこの部屋を見て、似てるかも…って思いました。」というMさん、住みたい家のイメージと好きな映画の記憶がつながっていたようです。「はじめは本当に出来てるものを買えればいいと思っていたのに、自分でもびっくり、こういう事考えるの好きだったみたいです。スケッチブックにイメージ描いちゃったり楽しくて。」とMさん。「通常なら最初に何パターンかイラスト図面でプランをご提案するのですが、はじめの段階からMさんの中でイメージがはっきりとされていたので、すぐにCADで図面起こしから始めました。本当にカタチになるのが早かったです。」と奥野。
美しいアーチと開放空間をゾーニングする長い廊下、視点を考えた技あり設計です。
リビングのアーチ開口越しに見えるキッチン、まるでフレームに収められた絵のように美しい景色です。Mさん邸のリビングの入り口は、あえて一番奥に設計されています。既存では2部屋あったところをひとつの空間にしたリビング、手前にあった既存の開口部を塞ぎ、もとは和室の押入部分だったところに新たにアーチ開口をつくりました。廊下を長くすることで、扉がほとんど無いつながった空間でありながら、きちんとゾーニングされています。
また、リビング開口部前をキッチンにすることで、リビングからのアクセスも良く、空間も広々と感じられます。廊下の玄関側からは生活空間がほとんど見えず、奥まで入ると開放的な空間が広がっている、技ありな設計です。
Pick Up
リビングの床は味のある足場板を使用、
省コストも嬉しいポイントです。
職人さんが長年使い込んだ味が魅力の足場板、近年その雰囲気が好まれ、リノベデザインとして床材に取り入れられるようになりました。低価格で省コストになるのも嬉しいポイント。淡いオレンジの壁紙やアンティーク調のファブリック類との組み合わせも素敵です。
リビングのみ足場板を使用し、他はすべて石目調テラコッタ風フロアタイルで統一されたMさん邸、異国情緒漂う雰囲気に団地の室内だということを忘れてしまいそうです。ラフな表情の足場板に対して、フロアタイルは機能性に優れた安心な素材、適材適所のセレクトが◎です。
老後を考えて使い勝手を追求した回遊動線のキッチン。
Toolboxのシンプルなキッチンを中心に、ダイニング・パントリー・洗面スペースをぐるっと回ることができる回遊動線は、とても使い勝手の良い設計です。終の住処としての住まいを考えていたMさん、老後の生活のこともイメージしていました。「歳をとっても一人で暮らせるように、動きやすく、掃除しやすい住まいしたくて。自分で動かせない家具とかも置かないようにしていて、キャスター付きが多いんですよ。」とMさん。玄関を入ったところからキッチンまでひと続きの床は、水に強く機能性に優れたフロアタイルを採用、キャスター使いでも安心の強度です。
家事効率がUPする、整然とした様が美しいオープンパントリー。
キッチン奥につくったパントリーにはオープンラックを設置、お揃いのケースに小分けされ整然とした様が美しい収納になりました。キッチンの回遊動線上にあるので、家事の時短にもつながります。レンジなどキッチン家電の置き場もここ、キッチン周りがすっきりと片付きます。天井高の関係でそのまま見せる形にした排気ダクトも、インダストリアルなデザインとして馴染んでいます。
玄関とパントリーに直結で便利な洗面スペース。
既存ではバスルームと一緒にあった洗面スペースを、回遊動線上に移動しました。「パントリーに掃除用具を置いているので、洗面スペースが隣にあってとっても便利なんです。来客時も玄関から手洗い場まで直結でいいんですよ。」とMさん。扉を設けないオープンな洗面スペースですが、印象的な壁紙とブラケット照明で演出され、独立した空間をつくっています。
古材を使ったDIYと造作で節約設計。
キッチン周りで印象的な古材は、Mさんがネットで見つけたものだそう。リビング床の足場板とも合う素材感です。この古材、余すところなく使われ、棚やデスクに生まれ変わりました。
キッチンカウンターは大工さんによる造作ですが、食器類の並んだ棚はMさんのDIYによるもの。古材とIKEAの脚を組み合わせたものだそう。
コンセントの位置にもこだわリました。ダイニングテーブルや食器棚の高さと、照明など電源を使うものの設置位置を考えて、ミリ単位で緻密に設計されています。
「配線とか考えるのもすごく楽しくて、新しい発見でした!」とMさん。
ご相談開始から2カ月で着工、緻密な照明設計は空間に美しい陰影をつくりました。
省コストで扉の数を最小限に抑えたMさん邸ですが、アーチ開口がポイントのデザイン設計なので、扉がないことは気になりません。
「こんな風にしたいって希望を伝えると、奥野さんがこういう感じですねって図面にしてくれて。まるで答え合わせをしているみたいな感じ。」とMさん。「お話を伺っていると、だんだんお好みがわかってくるんです。Mさんならこっちかな?みたいな感じで。」と奥野。ご相談開始から着工まで2カ月ほど、とてもスムーズな進行でした。
Mさん邸の照明器具は、ほとんどがブラケットやペンダント、打ち合わせ段階から入れる家具の情報を細かく伺い、照明の高さや位置などミリ単位で設計しました。リビングの淡いオレンジ色の壁や天井は、照明の陰影をより濃く美しい印象にしています。
Pick Up
難あり天井構造を逆手にとった、
エアコンを隠す垂れ壁のアイデア。
美しい空間に目を奪われ、しばらくして「そういえばエアコンがない」と気付いた取材班。実は垂れ壁で隠されていました。
こちらの団地はエアコンの配管の関係で、天井をフラットにすることができない構造でした。それなら逆手にとって段差の部分に垂れ壁をつくって、エアコンを隠してしまおうと考えました。さらに、もともと設置予定だったハンガーパイプも垂れ壁の内側に設置、見事なアイデアです。
写真はリビングのものですが、寝室も同様に垂れ壁で隠しています。
壁と天井のクロスを統一しているので、より美しい仕上がりです。
Pick Up
ソファ周りの便利な飾り棚は
余った足場板を使ってDIYしました。
ソファの周りを囲うようにつくられた飾り棚、スピーカーやランプ、ブックスタンドなどを置くのにちょうどいいスペースです。こちらのソファに寝転んで、本を読んだり映画を見たり、ゆったり過ごすことが多いというMさん、この棚をつくったのは大正解だったと言います。
「リビングの床に使った足場板の余ったものを奥野さんがとっておいてくれたんです。工事中、床の施工が終わったタイミングで現場に入らせてもらって、ソファが到着する前に無事完成しました。ちょうどこんな風にしたいと思っていたんです。本当にめちゃめちゃよかったですよー。」
マスタードイエローのドアがポイント、WIC付きの寝室。
寝室のマスタードイエローの扉は、Mさんこだわりのセレクト、プレイリーホームズのものです。無垢の木製に塗装仕上げ、丸い取手がお気に入りで、他で節約してでも取り入れたいと決めていたそう。寝室の入り口につくったWICの中も黄色で統一、ブティックのような装いに仕上がりました。
寝室内はグレーで統一、マスタードイエローの扉との色合いが素敵です。
Pick Up
あえて上部を開けたWICの壁、
色を切り替えた天井のクロスがポイントです。
寝室の入り口にあるWIC、あえて壁と天井はつながずに、隙間をつくっています。湿気がこもりがちなクローゼットに風を通し、寝室側からはWICからこぼれる光がアクセントになっています。
注目すべきは色を切り替えた天井のクロス部分です。ちょうどWICの壁のラインで区切っています。WICの中から見ると天井まで色が統一され、寝室側から見ると四角い黄色のクロス部分に光が当たり、こぼれた光がより印象的に映ります。
アパレル関係のお仕事をされているMさん、クローゼットに空気清浄機を設置されるなんてさすがです。
トイレはブラックの壁紙で空間を引き締めて。
トイレは壁も天井もブラックで統一。空間がぐっと引き締まり、便座の白さが際立って清潔感のあるモダンな雰囲気です。既存の窓から自然光が入るので、暗い印象にはなりません。シロクマのマットがちょうどよくクールさを和らげます。
扉はシンプルなPanasonicベリティスシリーズのもの、取手はこちらも丸いものを合わせました。
外の壁には古材を使って、オープンラックを設置しました。この動線はバス・ランドリースペースに向かう通路、ちょっとした収納にも便利なスペースです。
「毎日が嬉しくて、心にゆとりができたみたい。」
「ここに座ってみてください! すごくいいんですよー」とお茶を勧めながら話されるMさん、新しいお住まいを楽しまれているのが伝わってきます。
「Mさんの予算の使い方、120点満点でしたよねって社内で今も話題になるんです。」と奥野。予算内でできて大満足というMさん、予算配分がとても上手で、印象的な照明や家具もネットを駆使してお手頃なものを探されたのだそう。
「諦めなくて本当によかったです。一人暮らしのリノベなんて…って私みたいに遠慮してる人がいたら“できたよ!楽しいよ!”って教えてあげたいです」。
「ここに住み始めてから毎日が嬉しいんです。賃貸に住んでいたころはストレスを感じていたみたい。なんか私、最近優しくなったんですよー。」とMさん。心地よい住まいに暮らすと、自然と心にゆとりが生まれるんですね。