人とのつながりの温かさに惹かれた
ミッドセンチュリーな団地リノベーション

マンション
東京都町田市 T様 中古マンションを中規模リノベーション 家族構成:ご夫婦 猫ちゃん1匹 築年数:56年  

「団地っていいかも!」たまたま散歩で立ち寄った骨董店との出会いから、団地リノベーションを選んだTさん夫妻、奥様のインテリアデザインのセンスと風情ある団地が絶妙にマッチ。団地再生プロジェクトの未来が楽しみになるようなリノベーションのご紹介です。

  • 売買担当 笈川 寛
  • リフォーム担当 望月 陽介

人との出会いから団地の魅力を再発見。

ご実家の母屋が築150年超の古民家だったという奥様は、古いものの良さをよくご存知です。SNSで見つけた骨董店に興味が湧いて、散歩がてら二人で出かけたそう。
「場所を気に入ったのが最初。街の景観がなんだか懐かしい感じがしていいね、って。骨董店の店主さんが同世代で話が盛り上がって、商店街には若い移住者も多くて、すぐに仲良くなりました。ここに住むとなんか楽しいことが起こりそうな予感がしました。商店街に程近い団地の存在感もモダンでかっこよく、見に行ってみたら見晴らし の良い立地でいいなって思いました。」 とTさん。
Tさんのご希望は初めからリノベーションありき、インテリアデザインを学ばれていた奥様主導で内装デザインを決定しました。(写真は奥様によるデザイン画)
団地には、他にも立地・周辺環境の良さなどメリットがたくさんあります。広い敷地にゆったりと建てられているので、棟と棟の間隔が広く、風通しがいい。プライベートも確保され、窓からの景観を楽しめる豊かさも魅力的です。

団地再生プロジェクトが評価されています。

老朽化が心配されるデメリットを持つ団地、購入時に大事なのは「見極め」です。Tさんが購入された団地は、「団地再生プロジェクト」を高く評価された物件です。築50年以上という高経年でありながら、耐震改修、外断熱改修など総合的な工事内容を、補助金の活用などを組み込んだ計画を立案し、完成しています。規模の大きい団地だと、区画ごとに組合が分かれていることもあり、修繕状況が違う場合もあるので注意が必要です。組合がしっかりしているか「見極め」が大切です。
「はじめにお願いしていた仲介業者さんは購入段階になっても資料を揃えてくれなくて、購入が一度頓挫しているんです。しあわせな家さんにお願いしたらすぐに調べてもらえて。ローンやリノベーションのことも連携していて、一緒に相談できたのもよかったですね。コミュニケーションが取れているのがよく分かるんです。引き渡しまですごくスムーズで、不安に思うことがなかったですね。」とTさん。

ミッドセンチュリーデザインがマッチした、懐かしく温もりのあるダイニング。

インテリアデザインのテーマは「ミッドセンチュリー」。ミッドセンチュリーとは、1940-60年代に発祥した家具・建築デザインを指し、シンプル・モダンでありなが ら遊び心あるポップなカラーや曲線が特徴です。DIYで飴色にニス塗装したスクールパーケットの床と、はじまりの骨董店で見つけたアンティーク家具が落ち着いた雰囲気をつくり、アクセントカラーを引き立てています。 どこか懐かしさと温もりを感じる雰囲気になりました。

家電を隠すこだわりの設計。水回りの変更が難しい団地でも洗濯機が移動出来ました。

キッチンに近づき横を見ると、冷蔵庫とオーブンレンジが現れました。そしてキッチン横の収納扉を開けると、なんと洗濯機が。「リビングから家電が目に入らないように」というこだわりの設計です。ベランダの近くに洗濯機があるのはとっても便利、水回りの変更が難しい団地ですが、水回りをまとめることで実現できました。こちらの団地は、配管の管理もしっかりしていて、定期的に業者による清掃が行われています。老朽化が心配な配管も、メンテナンスが行きとどいていて安心です。

ヴェルナー・パントンのフラワーポットを基準に計画したポップな配色のキッチン。

キッチンは とことんシンプルを追及して業務用ステンレスキッチンを採用しました。ステンレス素材に合わせてインディアンラックという国内ではあまり見ないデザインのラックを正面に設置。タイルの目地はオレンジ色を採用。一見奇抜と思える配色ですが、ミッドセンチュリーの雰囲気にマッチしています。
「はじめにカラースキームで、茶・赤・オレンジ・グリーン・アイボリーの5色をテーマカラーに決めました。引越しのタイミングで購入したパントンのペンダントライトのオレンジをメインにキッチンタイルやペンキの色を決めていきました。1960年代当時に作られたホウロウ素材の照明なのでキッチンツールもホウロウや陶器のカトラリー入れで揃えてみました」 と奥様。
ケトルやキッチンバサミの赤、調味料の蓋の赤、オープンな収納に並ぶものにも、細やかな配色が考えられていて美しいです。

アールの窓枠が印象的なリビング、団地のサッシを見せないアイデアです。

リビングでひときわ印象的なコーナーアールの窓、曲線が特徴的なミッドセンチュリーの世界観にピッタリです。シルバーのサッシを見せたくないという奥様のご要望から生まれたアイデアです。「はじめは木製の内窓をつける相談をしていたのですが、結構費用がかかることがわかって、もう少し費用が抑えられる壁をふかして隠すことを提案してもらいました。これならアールのコーナーもできて、ベンチもつくれるってことで。このベンチ、風呂上りに座ってビール飲みながら涼むのにいいんですよ。」とTさん。南北に風が通り抜ける団地ならではの心地よさですね。

Pick Up

ふかし壁の良さを存分に活用、
シェードの機械部分も完全に隠せます。

サッシを隠すふかし壁は、腰高窓にも採用、コーナーアールのデザインで統一されています。シェードに選んだのはNORMANのハニカムスクリーン、程よい透け感で優しい光を届けます。器具が完全に隠れるので、閉じていると存在に気づかないほどです。
ふかし壁の厚みを利用して、ニッチもつくりました。
「はじめにカーテンやウッドブラインドも考えましたが、このシェードで正解、すごくよかったです。和紙っぽいけど部屋の雰囲気にも合いました。ベンチをつけたのもよかったですね。ちょっと腰掛けたりできて便利です。猫も喜んでいます。」と奥様。開けていても閉めても美しい窓ですね。

バルコニー側につくったインナーテラスは、猫ちゃんもお気に入り。

以前のお住まいで、猫ちゃんの水飲み場が水浸しになるのが悩みだったという奥様。バルコニーに面した部分の床をテラコッタ調のタイルにしました。ビニール素材ではなく磁器質なので、自然素材の風合いです。給水率が非常に低いタイルなので、水周りにピッタリ、洗濯機周りも安心です。猫ちゃんは取材中もご飯を食べにきたり、ベンチに座って外を眺めたりと、お気に入りの場所のようでした。インナーテラスはバルコニーとリビングをやわらかくつなぐ場所、植物を置くスペースとしても最適です。

Pick Up

床下に埋め込み造作で
フロアコンセントをつけました。

猫ちゃんがご飯を食べていたのは、タイマー式の自動給餌器、これがあれば家族が留守の時でも安心ですね。配線が全く見えないのにどこから電源を?と思ったら、床から出ていました。さすが美しさを追求するTさんです。床下に埋め込み造作でフロアコンセントを設置しました。ダイニングテーブルでホットプレートを使ったり、ちょっと電源が欲しい時に便利ですね。

アール壁で圧迫感のない広々とした空間を実現。

Tさん邸はラワン材の壁や、飴色の床という落ち着いた色調でありながら、団地とは思えない空間の広さを感じます。そのポイントになっているのは、アールの壁です。もとは真っ直ぐな壁がありましたが、外すことのできる壁だったので、外して新たに曲面の壁をつくりました。この壁の後ろ側は収納になっていて、デッドスペースはありません。実はこのコーナー、TVの場所でもあります。「電化製品が極力見えないようにしたいので、TVは移動式にしています。二人ともあまりTVは観ない方で、観る時だけここに運んで来ます。」と奥様。眼から鱗の発想です!

Pick Up

壁の滑らかなアールと巾木無し仕上げは、
職人さんの丁寧な仕事がなせる技。

Tさん邸は、壁紙などの新建材を全く使っていません。巾木が無いのも特徴的です。壁は全て塗装、この美しいアールの壁には職人さんの技が光っています。新建材で覆う場合と違って、下地に直接塗装すると表面の凹凸が出やすく、滑らかな曲面をつくるのはとても高度な技術が必要です。また、巾木無しで隙間なく綺麗に施工するためには、材料の乾燥による伸縮を予測する経験豊富なプロの感や、床材保護の養生を入念に行う丁寧な仕事が必要なんです。
「工期中、仕事の邪魔にならないように17時以降に見にくると、工具なんかもすっごく綺麗に整頓されていて、いつも綺麗に掃除して戻られるんです。すごくいい大工さんにやってもらえて良かったです!」と奥様。

造作壁で空間をゾーンニングして、ワークスペースをつくりました。

奥様は現在、創作活動をされていて、リビングや玄関に飾られた素敵なタペストリーも奥様の作品です。リビングに化粧柱つきの造作壁を設置して、奥様のワークスペースをつくりました。上部に空間がある緩いゾーンニングが、閉塞感なく、心地よく空間を分けています。こちら側の壁は全てラワン材で統一、ピン留めや棚の設置が容易なのもラワン材のいいところです。ワークスペースの反対側は、壁一面のCDラックが美しいオーディオコーナーになりました。造作壁に設置したスイッチは、tool-boxのアメリカンスイッチ。ミッドセンチュリーの世界観に合わせて、全てのスイッチ・コンセントはインダストリアルデザインに統一されています。

真鍮とラワンとフランク・ロイド・ライト、本物を取り入れて世界観を高める。

Tさん邸のミッドセンチュリーデザインは、本物を巧みに取り入れることで高い完成度を実現させています。ビニールクロスなどの新建材を徹底的に排除して、ラワン材など無垢材の素のシンプルな美しさに限定。パーケットとタイルの境目の見切りには、上質で経年変化を愉しめる真鍮を使いました。照明器具には1960年代の名作、ヴェルナー・パントンのフラワーポットをダイニングに採用。玄関にはフランク・ロイド・ライトのROBIE®を設置、ラワンの壁にとてもよく似合っています。

ベンジャミンムーアで見つけたアンリ・マティスのブルーの壁。

寝室は、テーマカラーに拘らず、リラックスできるブルーの壁にしました。「アンリ・ マティスの代表作《JAZZ》シリーズのブルーに惹かれて、ベンジャミンムーアで同じブルーを調色してもらおうと思ったら、ラインナップにピッタリの色があったんですよ。」と奥様。さすが3600色もあるベンジャミンムーアです。

寝室の一部をWICにしてたっぷり収納を確保、
リビングからは中が見えない設計です。

寝室にした部分には、もともと小さな収納のついた洋室がありましたが、眠るだけの寝室は最小限のスペースでOK、余った分収納スペースを広げて、WIC(ウォークインクローゼット)をつくりました。
リビングと寝室をつなぐ位置にあり、使い勝手の良い動線です。床は全てリビングと同じスクールパーケット、中には無駄なく収納できるように、パイプや棚を工夫して設置してあります。開口部はリビングからは見えない位置に設定しているので、見た目すっきりです。

ラワン材の扉がシンプルで美しいシューズインクローゼット。

玄関を入って正面に見えるラワンの壁の中は、収納スペースになっています。リビングのアール壁の裏側にあたる場所です。大容量のシューズインクローゼットで、履き物以外にも、掃除用具や防寒着など、外回りで使うものを仕舞っておくのにとても便利です。
「はじめは取手無しのプッシュで開く扉にしようと考えていたんですが、望月さんが経年劣化で開閉しずらくなるリスクを考えて、この扉に合うハンドルを探してきてくれました!」と奥様。新しいものでも、経年で味わいの出る硫化イブシのハンドルなので、時と共にさらに馴染んでいってくれそうです。

石調の床とラワンの天井が印象的な玄関ホール。

ラワン材の天井が印象的な玄関ホール、真鍮とガラスの組み合わせがラワンにしっくり馴染む照明器具を合わせました。
ご実家には広い土間があったという奥様、玄関には土間を希望されていましたが、団地の規定で土間をつくることができません。そこでご提案したのが天然石調のタイルです。土間のような雰囲気があり、水にも強い磁器質です。洗面ボールの造作壁にも使って統一感を出しました。
「コロナがあってから、玄関入ってすぐに手が洗えるように、玄関に手洗い場をつくりたいなと思っていたんです。脱衣所も広くなったし、移動して良かったです。」と奥様。既存では脱衣所にあった洗面台を玄関ホールへ移動。洗濯機スペースがあった場所なので、配管問題も大丈夫でした。

団地の風情あるレトロなパーツを活かしたサニタリースペース。

グリーンのタイルが印象的なサニタリースペース。奥様のカラースキームの中のグリーンとオレンジ、アイボリーで配色されています。グリーンのタイルにオレンジの目地というのは、珍しい組み合わせですが、カラー設計に沿っているので、違和感なくマッチしています。団地の水回りには、隠してはいけない配管や、レトロな小窓や欄間など、風情あるパーツが残っています。トイレについていた既存の扉にもレトロガラスが使われていました。味のある部分はあえて残して再利用、扉は塗装し直して玄関ホール側に移動しました。床材は玄関ホールと色違いのものを選んで、ゾーンニングしています。

「暮らしの理想に共感してくれるフレンドリーさがいいですね。」

取材に訪れたのは桜の季節、窓の外は満開の桜でした。
「しあわせな家さんは、不動産のプロの視点からメリットもデメリットもしっかりと話してくれて、お金の面とか、工事の内容とか、心配事も腹を割って話してくれるっていう、その誠実さが良かったですね。」「ここで打ち合わせした時、望月さんが“窓から桜を眺めるなんていいですねー、ここで飲むビール絶対美味しいですよ!”って携帯で写真撮りながら自分のことのように楽しそうにしてくれていて、私たちの暮らしの理想を一緒に共感してくれてるって感じて、そんなフレンドリーさも安心感につながりました。」とTさん夫妻。これから団地には若い人が集まって、新しいコミュニティーが生まれゆきそうです。

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